「京の暖簾と看板」竹本大亀著 渡部巌写真

公開日: 更新日:

 人の顔にも例えられる暖簾や看板には、その店が積み重ねてきた歴史と、培ってきた風格がにじみ出る。本書は、老舗が軒を連ねる京都の街を彩る暖簾や看板を並べた写真集。
 まずは料理屋。

 宮中や宮家に料理を供する西陣の有職料理の老舗「萬亀楼」の暖簾は、白無地の麻暖簾に魚紋を模して屋号が墨書されており、シンプルでありながら、凝った意匠で格式の高さを感じさせる。かと思えば、窯焼き料理の「エンボカ 京都」の大ぶりの長暖簾は、茶鼠の渋い生地に地紋のように小さなロゴを配し、さらにその上に大きく赤でロゴを描き「伝統と斬新の共存」に挑む。

 その他、屋号の二字を鶴になぞらえて作り上げた独特の意匠を染めた「本家 たん熊本店」の暖簾や、真っ白な木綿の五幅の暖簾の真ん中に屋号だけが縦書きされた素朴さが潔い鯖姿寿司の「いづう」、「梅枝丸」の家紋が描かれた幔幕とその奥に下げられた暖簾が心地よいリズムを作りだす京料理「高台寺 土井」など。

 こうしてみると、店と路地との間を隔てる結界のような一枚の布が、実に多くのことを表現していることに気づく。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋