「北京メモリー」福井孝典著

公開日: 更新日:

 主人公は、産読新聞北京特派員の伊江和夫。5年前から中国に赴任していた伊江だったが、ついに公安から「国家安全危害罪」や「国家政権転覆扇動罪」に抵触する恐れがあると呼び出しを受けた。あくまで記者活動の一環としての取材であり、やましいところはないと言い張ったものの、このままエスカレートするとスパイ容疑で摘発するという警告に一瞬背筋に冷たいものが走る。

 というのも、在北京日本大使館1等書記官の長澤辰郎から情報収集の協力を求められ、金を受け取っていたからだ。

 アメリカ大使館員や美人女性コンパニオン、党中央の政治局員である江思湘(チャン・スシャン)などに会い、次第に諜報機関の闇に巻き込まれていくのだが……。

 紅道(共産党)と黒道(マフィア)が跋扈する中国で直面する命がけの情報戦を描いた社会派小説。沖縄在住の主人公の父・昭夫も登場させ、左派・右派双方の主張を盛り込んだ、まさに現代を描いた物語となっている。(作品社 1400円+税)



【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する