「山崎豊子先生の素顔」野上孝子著

公開日: 更新日:

 52年の長きにわたって、国民的作家・山崎豊子に伴走し、支え続けた秘書が、「先生」との波瀾万丈の日々を回想している。

 先生は大阪・船場の老舗昆布問屋のいとはんで、毎日新聞の記者をしながら小説を書き始め、「花のれん」で直木賞を受賞、作家として順調なスタートを切っていた。男兄弟に囲まれて育ったせいか、気にいらないことがあると、乱暴な男言葉で新米秘書を容赦なく怒鳴りつける。自己中心的で、せっかちで、思い立ったら即行動。「意見なき者は去れ」が口癖で、秘書にも意見を求める。怖くて緊張の日々だったが、どこかチャーミングで憎めない。おしゃれで面食い。ご主人は面長で物静かなイケメンだった。

 正義感が強く、権力の横暴を憎む先生は、「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛地帯」「二つの祖国」「大地の子」と、重いテーマを据えたスケールの大きい長編に次々に挑む。テーマを見つけると取材の鬼と化し、豊富な人脈と作家としての実績を武器にアポをとりつける。どんな大物が相手でも臆することがない。作品のモデルとなる人物の過酷な体験談に涙することもあった。作品の舞台をこの目で確かめようと、シベリアだろうが中東の砂漠だろうが、どこへでも出かけていく。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  2. 2

    日本ハムFA松本剛の「巨人入り」に2つの重圧…来季V逸なら“戦犯”リスクまで背負うことに

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  5. 5

    「存立危機事態」めぐり「台湾有事」に言及で日中対立激化…引くに引けない高市首相の自業自得

  1. 6

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  2. 7

    (2)「アルコールより危険な飲み物」とは…日本人の30%が脂肪肝

  3. 8

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  4. 9

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 10

    高市政権の物価高対策はパクリばかりで“オリジナル”ゼロ…今さら「デフレ脱却宣言目指す」のア然