「月神」葉室麟著

公開日: 更新日:

 元福岡藩士の月形潔は、明治13年、集治監(監獄)建設調査団の団長として函館へ向かう。航海中、その脳裏に浮かぶのは、維新前に藩による勤皇党弾圧で刑死した尊敬するいとこの洗蔵のことだった。万延元年、過激な尊皇思想が警戒され閑職に追いやられていた洗蔵は、全国で活発化する尊攘派の動きに呼応して内乱の兆しが切迫していると藩主の黒田長溥に参勤の中止を求めるが、黙殺される。さらに長溥に拝謁し、重ねて江戸参府の中止を求めたため、閉門謹慎を命じられてしまう。そんな洗蔵を慕い尊敬していた潔は、「月形家の者は夜明けとともに昇る陽を先導する月でなければならない」と語っていた彼の言葉が忘れられない。

 信念を貫き戦った幕末の武士を描く歴史小説。

(角川春樹事務所 600円+税)

【連載】文庫あらかると

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です