「期限切れのおにぎり」鈴木哲夫氏

公開日: 更新日:

 実際、阪神・淡路大震災では、当時の村山首相の初動がもたついて犠牲を大きくしたが、その後、この二人三脚体制が取られて復旧は動き出した。

「ところが今回は、テレビ会議で失言した松本文明内閣府副大臣レベルを、単なる連絡要員として派遣しただけ。大雨の予報が出て、官邸は避難者を家屋の中に移動させるように指示したが、現地の首長が『激しい揺れで家屋がつぶれる恐怖があるからこうして外にいる。それを建物に入れとは現場の気持ちが分かっていない』と怒る場面がありました。現場に決定権を持った政治家がいれば、その場で『屋外で行こう』と決めればいい。官邸はそれを追認し、何かあれば手を打てばいいのです」

 官邸が最終決定権を持つのはもちろんだが、そのプロセスに「現場主義」が入っていなければ意味がない。

 本書では多くの教訓が語られている。新潟県中越地震では、被災者が生き延びるために期限切れのおにぎりを配る決断ができるかという首長の自問自答。東日本大震災では、霞が関が平等という概念を自ら壊し、市民に不平等が生じてもできることから手を打っていくべきだという官僚の反省。復旧・復興は「急ぐ」だけでなく「寄り添い、待つ」ことだというローカル紙編集長など……。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  4. 4

    山本舞香は“ヤンキー”より“令嬢”がハマる?「波うららかに、めおと日和」《ふかふみコンビ》で人気急上昇

  5. 5

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  2. 7

    中川翔子「Switch2転売購入疑惑」を否定も火に油…過去の海賊版グッズ着用報道、ダブスタ癖もアダに

  3. 8

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  4. 9

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る