「さよならインターネット」家入一真氏

公開日: 更新日:

 現在は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が大流行。実名、匿名を問わず、個人で情報を発信するのは当たり前の時代だ。しかし、誰もが声を上げられるようになったがゆえに「炎上」につながることもしばしばある。

「某芸人が、母親が生活保護を受けているとツイッターにつぶやいて騒動になったことは記憶に新しいですが、このようにツイッターにおける炎上の話をよく聞きます。ところが、匿名で他人の悪口を言っている人が、いざ素性がバレたとき、アカウントを削除して逃走することもある。逃げるくらいなら最初からするなと思いますが、それに伴って最近感じるのが閉塞感です。何か落ち度があれば、『社会悪』や『不謹慎』の名の下、皆で寄ってたかってリンチでしょう。こうした現状が続けば、国家によるネット上の取り締まりも現実味を帯びてくる。ネットでは『権力による監視なんてイヤだ』という意見が大半ですが、すでに相互で監視し合う空気をつくり始めているのが現状なんです」

 本書は、いち早くレンタルサーバーサービスを立ち上げ、SNS時代の寵児となった著者による、ネット一辺倒生活への警告書である。

 かつてのインターネットには自由な空気が漂っていた。著者は中学時代に学校でいじめに遭い、引きこもりに。

 そんな家入氏を救ったのがネットの世界で、「ネットに没頭している時間は、つらい気持ちを忘れることができた」と言う。

 当時はどちらかといえば、“趣味”の側面が強かったネット。それが個人ブログが流行し、04年にはSNSのはしりとなる「mixi」がサービスを開始すると、その形も徐々に変わっていった。

「一億総表現社会という言葉ができたのも、そのころですね。僕らが大好きなネットが、どんどん広がっていく。誰もが日記やブログで声を上げられる。非常に喜ばしい気持ちでした」

 しかし、ネットの世界が拡大するにつれ、輪郭もぼやけてきた。

 仕事や生活には必要不可欠。さらに物心ついたときからネットがあった若い世代の中には、「家入さんはネットが好きというけど、意味が分からない。それってハサミが好きというようなものでは」と言う者もいたという。自分と他人との区別が曖昧なだけでなく、すでにネットは空気と同じようにあって当然、現実との境も曖昧になった。

「そうした変化は悪いとは言いません。テクノロジーは日々進化しているので、避けられない未来もあるでしょう。しかし、それを『悪い』とか『世界は素晴らしくなる』とか、無条件に否定、称賛してはいけません。題名の『さよなら』とは、一度、自分の知っているインターネットから距離を置き、フラットな視点から今後の推移を見つめようという意味なんです」

 趣味や居心地の良さを追求するあまり、自分の主張と異なった意見を目にするや、攻撃的に排除するケースも近年は少なくない。著者が危惧するのもそれだ。

「一つ一つのサークルが狭いまま閉じていることは、良いこととは言えません。かといって完全にネットを断ち切るのは現代社会では不可能でしょう。もはやネットと現実は切り離せません。だからこそ、あえてスマホに触らない孤独な時間を週に一度つくるのでもいい。自分の趣味と正反対の世界に飛び込むでもいい。本屋に行くのもいいでしょう。効率化にこだわらず、偶然の出会いを楽しむ生き方が、今後は大事になってくると思います」

▽いえいり・かずま 1978年、福岡県生まれ。01年にレンタルサーバーサービス「ロリポップ!」を提供。現在はクラウドファンディング・プラットホーム「CAMPFIRE」代表。著書に「新装版こんな僕でも社長になれた」「お金が教えてくれること」など。

【連載】著者インタビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「遅刻横行」「新入生は練習禁止」…かつての神村学園を変えた小田監督が語った指揮官の矜持

  2. 2

    前田敦子“アンダーヘア透け疑惑”写真集が絶好調! トップ張った元アイドルの生き様を女性が強く支持

  3. 3

    「9条守れ!」雨の国会前で改憲反対デモに2万4000人が集結! 参加者は手にペンライト、若者も大勢集まる

  4. 4

    元プロ野球選手の九州国際大付・楠城祐介監督に聞いた「給料」「世襲の損得」「指導法」

  5. 5

    「高市離れ」が参院自民と霞が関で急加速 11年ぶり暫定予算ドタバタ編成がダメ押しに

  1. 6

    佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れていた

  2. 7

    沖縄尚学の左腕・末吉良丞は日米争奪戦を呼ぶ「間違いなくドラ1候補」

  3. 8

    山田裕貴「新撰組」SPドラマは盤石ムードも…続きはU-NEXT配信の“まき餌”商法に視聴者離れの懸念

  4. 9

    高市首相の日米首脳会談「帰朝報告」は中身スカスカ…イラン情勢の詳細は「お答え控える」連発の厚顔

  5. 10

    岸田元首相が異例のバラエティー番組出演 “増税メガネ”ネタで大ハシャギのウラに潜む焦りと執念