「黒面の狐」三津田信三著
満州の建国大学で学んだ物理波矢多は建国大学の理念が満州の農民に伝わっていなかったことに衝撃を受け、終戦後、炭坑夫の合里という男に出会い、九州の炭坑に入る。ある日、坑内で落盤事故が発生し、合里が逃げ遅れた。ガス中毒の危険があるため救援に入れない。
そんなとき、炭鉱住宅でしめ縄で首を吊った死体が発見された。近くで遊んでいた子どもが黒い顔の狐が入って行くのを見たが、部屋は密室になっていて狐は姿を消した。その後、炭坑夫が同じ死に方をする事件が続き、坑内で不慮の死を遂げた者は黒い狐になるという迷信に炭鉱中がおびえるが……。
戦後の炭鉱を舞台にしたミステリー。(文藝春秋 1800円+税)