【海外文学】大家族に勇気と希望を与えたあるモノ

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 そのばあさんには息子が5人いる。ばあさんといっても、まだ57歳。棒のように痩せこけ、歯はむしばまれ、真っ黒い穴があいている。顔には無数のシワが刻まれ皮膚病のように見える。長年の放浪生活で、寒暖の厳しさに耐えて生きてきた。戦時中は同じ民族が収容所に送られ、虐殺された。世間からは今もなお迫害されている。戸籍も登録されず、教育も社会保障も受けることができない。

 それでも、ばあさんは陽気だ。喜びに満ちた今の生活が好きだ。5人の息子たちもみな一緒に暮らしている。長男は独身だが、ほか4人にはそれぞれ嫁がいる。好き嫌いはあるが、嫁も自分の娘だと思っている。駆け回る孫たちが大きくなるのを見ながら、今日もばあさんはたき火の前に座る。

 そんな大家族の元にある日突然、外人の女が現れた。外人と呼ぶのは彼ら独特の警戒心から。その女はあるモノを手に毎週訪ねてきた。それは小さな子供たちに夢をもたらした。女たちには勇気と希望を与えた。男たちには戸惑いと気づきを与えた。ばあさんは変わらない。自分の誇りは捨てない。ただ、その外人の女が未来永劫抱える悲しみをばあさんも知っている。あるモノの力、そして心の交流が淡々と、かつ深く描かれている。

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