• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

【海外文学】大家族に勇気と希望を与えたあるモノ

 そのばあさんには息子が5人いる。ばあさんといっても、まだ57歳。棒のように痩せこけ、歯はむしばまれ、真っ黒い穴があいている。顔には無数のシワが刻まれ皮膚病のように見える。長年の放浪生活で、寒暖の厳しさに耐えて生きてきた。戦時中は同じ民族が収容所に送られ、虐殺された。世間からは今もなお迫害されている。戸籍も登録されず、教育も社会保障も受けることができない。

 それでも、ばあさんは陽気だ。喜びに満ちた今の生活が好きだ。5人の息子たちもみな一緒に暮らしている。長男は独身だが、ほか4人にはそれぞれ嫁がいる。好き嫌いはあるが、嫁も自分の娘だと思っている。駆け回る孫たちが大きくなるのを見ながら、今日もばあさんはたき火の前に座る。

 そんな大家族の元にある日突然、外人の女が現れた。外人と呼ぶのは彼ら独特の警戒心から。その女はあるモノを手に毎週訪ねてきた。それは小さな子供たちに夢をもたらした。女たちには勇気と希望を与えた。男たちには戸惑いと気づきを与えた。ばあさんは変わらない。自分の誇りは捨てない。ただ、その外人の女が未来永劫抱える悲しみをばあさんも知っている。あるモノの力、そして心の交流が淡々と、かつ深く描かれている。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安倍政権また後手後手 西日本豪雨の補正予算が置き去りに

  2. 2

    浮いた話もなし…波留の“私生活”がベールに包まれるナゾ

  3. 3

    日大アメフト部新監督 立命大OB内定に選手らは拒否反応

  4. 4

    太った? 元AKB小嶋陽菜のムッチリ体型にファン容赦なし

  5. 5

    政財界とも結びつき深く…故・浅利慶太さんの「功と罪」

  6. 6

    傲慢でぶれない自民党と公明党 国民のことは考えていない

  7. 7

    サンドウィッチマン富澤 2007年M-1優勝の瞬間を振り返る

  8. 8

    生田悦子さん 最期の言葉は「サンドイッチ買ってきて」

  9. 9

    ドラマ引っ張りだこ 「高嶺の花」でも話題の峯田和伸って

  10. 10

    英紙も警告 2020年の東京五輪は“殺人オリンピック”になる

もっと見る