【アメリカ文学】あの名作の20年後を描く感動長編

公開日: 更新日:

 1960年代初頭、米国の権威ある賞を受賞し、それを原作として映画も大ヒット、名画の仲間入りを果たした――といえば、いくつかの名前が思い浮かぶだろう。本書はその20年後を描いた作品。

 時は1956年。映画ではおてんばの少女だった本書の主人公も今では26歳。故郷の南部の町を出てニューヨークで暮らしていた彼女が久々に帰郷するところから物語は始まる。幼い頃いつも一緒に遊んでいた兄は数年前病死し、もう一人の仲間も町を出たきり戻る気配がない。尊敬する父親は関節炎に苦しみ衰えていた。

 それ以上に驚かされたのは、かつては社会的な不公正に対して敢然と立ち向かった正義感にあふれた父親が、人種差別を助長する集会に参加していたこと。一体どうして? 父に、この町に何が起きたのか。彼女は父を激しく問い詰める。煮え切らない答えを返す父に、彼女は絶望の淵に追いやられる……。

 往年の名画を知る人にはショックな内容だが、長らく封印されていた本書が、時代が戻ったかのような現在のアメリカで刊行された意義は大きい。

★先週のX本はコレでした
「本を読むひと」アリス・フェルネ著(新潮社 1900円+税)

【連載】書名のない書評「ゲンダイX本」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

  2. 2
    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

  3. 3
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

  1. 6
    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  2. 7
    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

  3. 8
    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

  4. 9
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  5. 10
    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮

    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮