「人民元切り下げ」村田雅志著
近年、中国経済は経常収支も資本収支も黒字だったため、外貨準備の増加が続いていた。しかし、2012年を境に資本収支が赤字に転落して外貨準備の増加が鈍化し、2015年には中国資本の外国への流出が明確化して外貨準備が減少に転じた。外貨が不足すれば元買い介入が限界を迎えて、人民元切り下げに追い込まれる可能性がある。
果たして中国発の金融市場ショックは起こるのか。外資系通貨ストラテジストである著者が、経済データを基に現状を分析し、グローバル経済の行方を考察する。
元安のトリガーとなる事象として、著者は①資本流入額が資本流出額を下回る②貿易黒字であっても輸入が減少する③中国が他国へのインフラ投資を拡大④中国大手企業が海外企業のM&Aを行う⑤中国株の下落⑥外貨準備が減少を続ける――等を挙げている。
投資判断をする上では、感情的な報道からは距離を置き、経済データに表れるサインを見逃さないことが肝要と主張している。(東洋経済新報社 1600円+税)