「三流の維新一流の江戸」原田伊織著

公開日: 更新日:

 薩摩・長州藩士が、封建的な徳川体制を打ち破り、西欧列強諸国による植民地化を防いで、日本を近代国家にしたというストーリーで語られる明治維新。果たして戦後日本人が学んだ近代史は、正しかったのか。

 本書は、明治維新を起点とする近代史を検証した歴史検証本だ。

 近代の幕開けとされる明治維新は、歴史上存在しないと著者はいう。この時期に起きたのは、薩長藩士による政治・軍事活動であり、ヒーローとして描かれる薩長の武士は、英国の支援を受けて大量の武器を買い入れている。それはアルカイダが大国から武器を供給されたのと同じであり、暗殺をもためらわない彼らは、テロリストでしかなかった。

 しかも、スローガンとなった尊王攘夷も、口実でしかない。むしろ、明治政権が全否定した江戸こそ、平和を維持し、エネルギーの循環体系が存在した社会だった。将来世代が生きる上でのヒントは、維新によって隠されてしまった江戸にこそあるという指摘が興味深い。(ダイヤモンド社 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ