里山を買い漁る父親と「故郷」を見いだした娘

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「里山」と総称される日本の田舎もご多分に漏れず、少子高齢化のあおりにあえぐ昨今。後継ぎのいない山林農家が次々に林業を退き、山林の価格が下落する一方、それを買い漁る外国人も増えているという。

 そんな現実を見据えながら、しかも単なる“社会派問題作”に終わらないのが、今週末封切りの映画「ひかりのたび」である。

 どこにでもありそうな山裾の町を、油断ならない目つきの男がカメラを手に歩き回っている。どうやらよその町から移り住んできた不動産ブローカーで、あたりでも札付きの鼻つまみ者らしい。共感できない人物を主役に据えるのは難しいのだが、新人監督の澤田サンダーは周到な手つきで全編モノクロ画面を操り、底意ありげな世界を探ってゆく。正体不明の男は里山買い漁りの手先になって町に住み込み、何年もかけて買い叩きの罠を仕掛けているらしいのである。

 興味深いのは、劇中に仕掛けられた男の娘の存在。離婚した父親について各地を転校してきた彼女は、父とは対照的に、ようやく高校で腰を落ち着けたこの地に「故郷」を見いだしている。その存在感が、どこの共同体にも属しない影のような父親を照り返す月明かりとなって、次第に輝きを増してゆくのである。

 柳田国男「遠野物語・山の人生」(岩波書店 920円)は山と里が織りなす日本社会の風土を語る民俗学の古典。そこで「山人」(やまびと)と呼ばれるのは山と里の間をゆくマージナル・マン(境界人)のこと。まさにあの男のように裂け目をゆく遊動者なのだ。

 <生井英考>

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