• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

里山を買い漁る父親と「故郷」を見いだした娘

「里山」と総称される日本の田舎もご多分に漏れず、少子高齢化のあおりにあえぐ昨今。後継ぎのいない山林農家が次々に林業を退き、山林の価格が下落する一方、それを買い漁る外国人も増えているという。

 そんな現実を見据えながら、しかも単なる“社会派問題作”に終わらないのが、今週末封切りの映画「ひかりのたび」である。

 どこにでもありそうな山裾の町を、油断ならない目つきの男がカメラを手に歩き回っている。どうやらよその町から移り住んできた不動産ブローカーで、あたりでも札付きの鼻つまみ者らしい。共感できない人物を主役に据えるのは難しいのだが、新人監督の澤田サンダーは周到な手つきで全編モノクロ画面を操り、底意ありげな世界を探ってゆく。正体不明の男は里山買い漁りの手先になって町に住み込み、何年もかけて買い叩きの罠を仕掛けているらしいのである。

 興味深いのは、劇中に仕掛けられた男の娘の存在。離婚した父親について各地を転校してきた彼女は、父とは対照的に、ようやく高校で腰を落ち着けたこの地に「故郷」を見いだしている。その存在感が、どこの共同体にも属しない影のような父親を照り返す月明かりとなって、次第に輝きを増してゆくのである。

 柳田国男「遠野物語・山の人生」(岩波書店 920円)は山と里が織りなす日本社会の風土を語る民俗学の古典。そこで「山人」(やまびと)と呼ばれるのは山と里の間をゆくマージナル・マン(境界人)のこと。まさにあの男のように裂け目をゆく遊動者なのだ。

 <生井英考>

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    県警・消防は380人動員 なぜ理稀ちゃんを発見できなかった

  2. 2

    逸材ゴロゴロ 夏の甲子園“契約金1億円”ドラ1候補7人の名前

  3. 3

    もし破局したら…“恋愛露出狂”剛力&前澤社長の未来予想図

  4. 4

    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見

  5. 5

    総裁選で論戦拒否…安倍首相が打って出た「逃げ恥」作戦

  6. 6

    ドラ1候補社会人も“直メジャー”…日本球界はなぜ嫌われる

  7. 7

    まるで炎上商法 “超人ショー”と化した24時間TVの存在価値

  8. 8

    キムタクは“御一行”で…被災地を単身訪れた斎藤工との差

  9. 9

    国連が原発作業員の被ばく危惧も…安倍政権またもガン無視

  10. 10

    巨人・重信の台頭で…“FAの目玉”広島・丸の獲得に影響も

もっと見る