「武士マチムラ」今野敏著

公開日: 更新日:

 物語の主人公は、琉球王国・泊村に住む元服間近の少年・松茂良樽金。ヤマト薩摩藩の侵攻をよく思わず、朝貢貿易の相手国・中国に憧れを抱いていた彼は、手(ティー)と呼ばれる武術に興味を持ち、父のもとで指南を受けた。

 さらに元服を終えて興作という名を授かった後に、宇久親雲上、照屋親雲上といった手の名士たちの下で修行を重ね、才能をめきめきと伸ばして島の英雄となっていく。そんな折、明治維新の荒波がヤマト幕府を襲い、琉球王国を支配していた薩摩藩も消滅することに。

 ヤマトの配下から逃れられるかに思えたが、琉球王国は消滅。興作は手の修行を通して沖縄人の在り方を模索するのだが……。

「隠蔽捜査」シリーズなどで人気の著者による最新作。道場「空手道今野塾」を主宰する空手有段者の顔を持つ著者だけあって、その道を極めようと挑む若者の心模様の描写が秀逸。

 歴史に翻弄される沖縄の義憤と葛藤を、ひとりの男の生涯を通して描いている。

(集英社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い