「東京発 半日旅」吉田友和氏

公開日: 更新日:

「半日旅」とは、思い立ったらすぐに実行できる旅のこと。

「私の旅行作家としての得意ジャンルは、もともと短期旅行なんです。週末土日で海外旅行とか、10日間で世界一周とか、日帰りで香港に行くとか、当たってくだけろ、いかに切りつめるかというのがテーマなので、東京近郊の旅ガイドが、半日旅というのは自然な流れでした。事前に準備や予習をしなくてもいい。行きたいときに気軽に出かけ、宿泊せずに帰ってこられる半日旅は、意外と魅力なんですよ」

 東京近郊の60カ所を紹介。近場では、後楽園近くの「文京シビックセンター展望ラウンジ」や、浅草の「世界のカバン博物館」。遠方だと、袋田の滝(茨城県)や足利学校(栃木県)、久能山東照宮(静岡県)も。エリアも中身もバラエティーに富んでいる。

「旅先は4つの基準でセレクトしました。私は戦国時代が好きなので、それに関連する神社仏閣。アニメやゲームなどサブカルチャーに関連する場所やイベント。海外によく行くので、異国気分に浸れる場所や異国の人が好きそうなところ。そして、おいしいものが食べられるところの4つですね」

 世界遺産の韮山反射炉(静岡県)や三渓園(神奈川)のような正統派観光スポットもあれば、B級グルメの行田フライと忍城(埼玉県)、台湾とみまごう聖天宮(埼玉県)など、読む人の好みと、その日の気分にマッチした場所が選べる。

 著者の旅体験の回想も登場して、ガイドだけではなくエッセーとしても楽しめる。

 とはいえ、思いつきや勢いで旅行するのが面白いと勧められても、旅慣れていない人にはハードルが高い。

 しかし、東京近郊の半日旅ならフラリと出かけても大丈夫。午後だけの休暇や、急に時間が空いたときにうってつけ。詳細は、目的地に向かう電車の中で、スマホで調べればいいのだ。

 食いしん坊には、全7章の1章がグルメ・大人の工場見学なのもうれしい。中央線勝沼ぶどう郷駅にはワイナリーが複数あり、ほうとうと一緒に味わうワインにゴクリと唾がわく。府中の分倍河原にあるサントリー<天然水のビール工場>東京・武蔵野ブルワリーは、工場見学ツアーの最後に、なんと3杯まで試飲できるらしい。

 ただし、工場見学など事前に予約が必要なことが多いので要注意。

「この電車に乗らないと半日で帰れない! というシビアな半日旅も紹介しています。また、秩父三峯神社の『白』い『氣守』は毎月1日しか入手できないので、その日は渋滞で5時間くらいかかりますから、途中でバスを降りて歩いたほうが早いくらいです」

 半日旅だからこそ、冒険やドラマがいっぱいなのだ。小さな子どもペットがいて、数日間も家を空けにくいという人にも手軽でいい。定年後に新しい趣味を探している人にも、近郊の半日旅はオススメだ。

「結果的に埼玉県のスポットが一番多くなりました。私も編集者も千葉出身なのに、地元は紹介しにくくて少なくなりましたね。千葉もいい所がいっぱいあるんですよ。1年かけて取材したので、季節感が出ています。そこを感じていただけるとうれしいです」

 いずれ、半日旅の関西版も刊行する予定だ。(ワニブックス 926円+税)

▽よしだ・ともかず 1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2005年旅行作家として活動開始。ドラマ化された「ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン」のほか、著書に「3日もあれば海外旅行」「10日もあれば世界一周」「思い立ったが絶景」「世界も驚くニッポン旅行100」(妻・松岡絵里との共著)など。

【連載】著者インタビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ