「知的性生活」志賀貢氏

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 1990年代、医師が解説するセックス本やテレビ番組は隆盛を極めた。著者はこのブームを切り開いた第一人者でもある。

 だが、ここ最近、セックスに関する本の売れ行きは好調とはいえない。著者自身もセックスより臨終にまつわる本の執筆が多かったという。それではなぜ、今再びセックスの本なのか。

「テレビもセックスの話を規制してるんですよね。深夜番組でもほぼやらない。週刊誌も、がん認知症の話だらけ。どれを取っても絶望の話ばかりですよね。少し前までは『死ぬまで』『死ぬほど』と謳ったセックス特集がありましたが、10年以上前の原稿を抜粋したり、ありきたりの記事でした。大学教授が新見解のセックス研究データを発表しても、ちっとも売れなかったそうで、出版社が及び腰になるのは当然ですがね」

 なぜここまでセックス離れが進んだのか。特にここ20年で、世間のセックスへの関心は劇的に薄くなったという。

「特に、今の30~40代の男性に余裕がないんですよ。心にゆとりやあそびがない。スマホが普及し始めてから特にダメだね。自分の世界だけで完結しちゃう。セックスもバーチャルでいい、煩わしいから生身の女性としないって言うんですよ。みんな同じ知識があっても、さらに深く追求しようとしない。モチベーションもやる気も性欲も低い。偏差値教育、管理・競争社会の弊害ですかね。日本だけでなく世界中が同じ状況。これからの人類は大変ですよ(嘆息)」

 世の男性を叱咤激励したいという思いもある。一方、女性は元気で性欲も強く、貞操観念は弱まった。要は女性上位の時代だという。どうしたら男性が精力を取り戻せるのか。そのヒントのひとつはコレステロールだ。

「モチベーションの源である男性ホルモン・テストステロンの分泌が少ないことも精力減退の要因。この性ホルモンの原料はコレステロールですから、過度に制限するのはよろしくない。スルメやアン肝、卵やレバー、魚卵も優秀な精力増強剤と言えるんですよ。そして、良質なタンパク質である肉も、血管や性器を若々しく保つのに必須です」

 本書ではこのほかに、ふにゃちんでも挿入可能な「靴ベラ症候群対策」、皮膚の性感帯「パチニ小体愛撫法」、乳房のGスポット「スペンスの乳腺尾部」など実用情報も。

 ただし、著者自身は、勃って入れるだけの即物的なセックスは目指してほしくないという。

「セックスは結局はコミュニケーションなんですよ、男と女の。でも今は一緒にお風呂に入り、観察し合って愛撫し合うなんて面倒くさいと言われてしまう。昔の男は遊郭を渡り歩き、どう女をイカせるかを習い覚えたものですが、今の男はソープへ行っても寝てるだけ。女の人がいじくり回すのを待ってるだけ。要するにだらしないんですよ、男が」

 約50年、診療を続けているからこそ、性にまつわる秘話や裏話もある。

「本当は池袋の“素股の女王”の話や、埼玉のラーメン屋店主が名器の嫁を持て余して、客とさせている話などありましたが全部割愛。角川の品性があるんでしょう(笑い)。でもね、この本、発売2週間で増刷しましたから。今後は男と女の真の愛情を書きたいですね」

 エロに関しては末永く健筆を振るってほしい。著者自身の健康法は?

「3つあります。3食しっかり食べる、特に肉を食べます。次に、きのうのことは全部背中の向こう側に飛ばして忘れて、常に前を向く。そしていくつになっても色気を失わない。女性に対する関心を持ち続けることです」

(KADOKAWA 800円+税)

▽しが・みつぐ 1935年北海道生まれ。昭和大学医学部大学院博士課程修了。医学博士。「医者のないしょ話」がミリオンセラーとなり、著書は270冊を超える。現在も診療の傍ら、性と死に関する執筆を続ける。新著に「臨終医だからわかる天国に行く人、地獄に落ちる人」「世界一しあわせな臨終 その迎え方の秘訣」「臨終医は観た!『いのち』の奇跡」など。

【連載】著者インタビュー

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