「本能寺の変 生きていた光秀」井上慶雪著
茶道・歴史研究家で83歳の著者が強く主張するのが「本能寺の変は豊臣秀吉の陰謀であり、明智光秀は冤罪を被った」という説である。
そもそも明智光秀と織田信長の間に不協和音あり、という定番が語り継がれてきたが、これは江戸中期の戯作者が面白おかしく描いた「川角太閤記」と「明智軍記」が、史実かのように流布したためだという。
光秀は死んでおらず、比叡山僧侶と入れ替わった説を展開。家康が幕閣に招聘(しょうへい)した碩学(せきがく)の僧侶・天海こそが光秀本人と説く。比叡山不動堂にある古い石灯籠の謎、徳川家光の出生や関ケ原の戦いの勝因など、驚くべき論拠を重ねていく。説得力もあり、今までの史観が一変する可能性も。たどり着くのは「歴史は時の権力者が歪曲・捏造(ねつぞう)し、都合のよいように書き換えている」という結論だ。 (祥伝社 1600円+税)