「ものと人間の文化史180 醤油」吉田元著

公開日: 更新日:

 日本料理に欠かすことのできない発酵調味料・醤油。その定義は「大豆、小麦、塩を主な原材料とし、こうじ菌を培養したものに食塩水を加えたものを発酵させ、熟成させて得られた清澄な液体調味料」となっているが、製法や利用法は時代とともに変化を遂げている。

 本書は、発酵醸造学や食文化史に造詣の深い著者が、歴史的かつ地理的視点から、製法が生まれた背景や、現代に至るまでの変遷をまとめている。

 たとえば、魚と塩は入手しやすい半面、大豆や小麦の栽培が難しい東南アジアでは魚を原料とした魚醤油が主流だったのに対し、大豆が貴重なタンパク源で小麦栽培も可能だった日本は穀物を原料とした穀醤=醤油が主流となった。

 一般に広まったのは江戸時代。そこから醤油なしには語れないそばや寿司、かば焼きなどの食文化が花開く。さらに海外進出を図るための醤油業界の試みや、2度の世界大戦が醤油に及ぼした影響にも言及。醤油がたどってきた紆余曲折が興味深い。(法政大学出版局 2600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした