「海を撃つ」吉村龍一著
昭和7年冬、越中の20歳の漁師・十兵衛は、村を代表して室生参りに出る。厳しい禊(みそぎ)に耐え、漁の神である室生山の龍神さまのお守りを持ち帰ると、村は鰤(ぶり)の大漁に沸く。村では、室生参りから戻った参拝者は福男として尊重される。参拝者の男根には福神が宿ると言い伝えられ、契りを交わすことが恩寵(おんちょう)と信じられていたのだ。
十兵衛は請われて毎夜、娘のいる家々を回る。そんなある日、初恋の繁子と再会し鎮守の境内で交わってしまう。数日後、タコ漁の最中に父が海に消える。龍神さまを怒らせたと村に居られなくなった十兵衛は、室生参りで出会った伝照を師に、三陸で銛(もり)突き漁の修業を始める。
因縁の巨大メカジキと漁師の戦いを描くネイチャーアクション。 (ポプラ社 640円+税)