「人形の影」岡本綺堂著
20歳の蔦子は、海辺の別荘で、発明家の父親・南瀬と暮らしている。南瀬は、甥で男爵を継いだ連三に蔦子を嫁がせようと、彼を別荘に招くが、放蕩者の連三は数日滞在後、近くの温泉宿へ移ってしまった。蔦子は、連三が嫌いではないが結婚相手とは考えられない。ある午後、蔦子は山百合の絵を描くため、1人で裏山に登り、迷ってしまう。あいにくの大雨となり、通りかかった若い男とともに炭焼き小屋に避難する。
男は、南瀬が雇った助手の麻田だった。雨が勢いを増し、小屋も浸水。迷った末に下山を始めた2人は、足をすくわれ、激流に流されてしまう。
半七捕物帳シリーズの作者が、新しい時代の生き方を模索する女性を描いた大正7年の新聞小説。
(光文社 800円+税)