「絶唱」湊かなえ著

公開日: 更新日:

 阪神淡路大震災から20年目の節目に当たる今年の1月17日に発行された短編連作集。

 双子の片割れを震災で失った若い女性を描いた「楽園」、婚約者への違和感を胸に国際ボランティア隊に参加した理恵子の物語「約束」、震災で父を亡くした経験から大学時代にできた子の命を消せずにシングルマザーになった杏子を描いた「太陽」、国際ボランティア隊で出向いたトンガで出会った恩人に向けて手紙を書く千晴の物語「絶唱」の4編が収録されている。

 太平洋に浮かぶトンガに引き寄せられるようにたどり着いた4人の女性は、みな震災経験からくる喪失感や後悔を胸に秘め、それでも生きていくための再生を試みる。表題作「絶唱」では、4話全体の種明かしがされる。

 震災後20年という月日を経たからこそ、語ることのできる震災経験者の心模様が繊細に描かれているだけでなく、著者自身の経験が投影された実話のようなリアリティーを持っている点も興味深い。

(新潮社 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(22)撮影した女性500人のうち450人と関係を持ったのは本当ですか?「それは…」

  3. 3

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  4. 4

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 5

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  1. 6

    参院選で公明党候補“全員落選”危機の衝撃!「公明新聞」異例すぎる選挙分析の読み解き方

  2. 7

    「愛子天皇待望論」を引き出す内親王のカリスマ性…皇室史に詳しい宗教学者・島田裕巳氏が分析

  3. 8

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  4. 9

    松岡&城島の謝罪で乗り切り? 国分太一コンプラ違反「説明責任」放棄と「核心に触れない」メディアを識者バッサリ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒