現生人類と旧人類は交配していた

公開日: 更新日:

 科学の進歩により、人類の進化の歴史が変わりつつある。デイヴィッド・ライク著、日向やよい訳「交雑する人類」(NHK出版 2500円+税)では、古代人の骨からDNAを抽出して解析する古代DNA解析の第一人者が、考古学上の証拠からは知り得なかった事実を明らかにしている。

 例えば、現生人類のホモサピエンスは旧人類のネアンデルタール人から進化したのではなく、2つの集団は交配していたという事実だ。古代DNA解析によると、現代の非アフリカ人ゲノムの1・5~2・1%ほどがネアンデルタール人由来であることが分かっている。そして、交配が行われた推定年代も、5万4000~4万9000年前ごろと絞り込めているのだという。

 さらに興味深いのが、古代DNA解析による「ゴースト集団」の発見だ。シベリアで見つかった旧人類のデニソワ人と、ネアンデルタール人や現生人類のゲノムのマッチング率を調べてみると、140万~90万年前に現生人類に至る系統から分離したと考えられる未知の人類「ゴースト集団」が、デニソワ人と交配していたことが示されたのだという。考古学的な証拠は見つかっていないものの、ゴースト集団のDNAがデニソワ人のDNAに少なくとも3~6%は寄与していることが推定されているそうだ。

 東アジアの章では日本人の成り立ちの歴史についても触れられている。ただし、古代DNA解析テクノロジーがヨーロッパで生まれたことや、政府の規制が厳しく国内の研究者主導の研究を好む傾向が強いことから、解析が遅れていることなどもつづられている。

 私たちはどこから来たのかという究極の問いに答える、最先端の解説書だ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  2. 2

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  3. 3

    「二刀流」大谷翔平と「記録」にこだわったイチロー…天才2人の決定的な差異

  4. 4

    中居正広氏は37年で築いた資産喪失の瀬戸際…不動産複数所有で倹約家も「違約金+α」の脅威

  5. 5

    フジテレビにとって“CMスポンサー撤退”より危険な「致命的リスク」とは? 企業危機管理の専門家がズバリ

  1. 6

    “天皇”日枝久氏しか知らない「ジャニーズ圧力」「メリーの激昂電話」 フジテレビは今こそ全容解明を

  2. 7

    橋本環奈『おむすび』はNHK朝ドラ視聴率ワーストほぼ確定…“パワハラ疑惑報道”が致命傷に

  3. 8

    巨人の50億円助っ人マルティネス 真面目でお人よしなだけに深刻な「2つの重圧」

  4. 9

    “かつての名門”武蔵の長期低落の深刻度…学習塾「鉄緑会」の指定校から外れたことも逆風に

  5. 10

    リアル店舗にこだわり続けるホビーショップ 経営危機からのV字回復は「脱 安売り」だった