「闇の日本美術」山本聡美著

公開日: 更新日:

 古い日本絵画に描かれた「闇」をのぞき込み、当時を生きた人々が何を恐れ、その恐怖といかに対峙、共生してきたかを考察するアートエッセー。

 6世紀に伝来した仏教の経典「華厳経」には仏の足元から放たれた光明が世界の隅々を照らす場面が描かれる。そのとき、菩薩の姿が明らかになるとともに世界の最下辺にある地獄の情景も浮かび上がり、人々は初めて地獄の存在を知った。

 現存最古の地獄絵である東大寺二月堂本尊十一面観音像の光背の線刻をはじめ、平安時代末期に制作された「地獄草紙」など、恐怖・苦痛・絶望を可視化した「地獄図」を読み解いていく。そのほか、「餓鬼草紙」や「病草紙」、死体が朽ちてゆく様を描いた「九相詩」など、絵画から日本人の死生観に迫る。

(筑摩書房 880円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  4. 4

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 5

    西武は“緩い”から強い? 相内3度目「対外試合禁止」の裏側

  1. 6

    「1食228円」に国民激怒!自民・森山幹事長が言い放った一律2万円バラマキの“トンデモ根拠”

  2. 7

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  3. 8

    辞意固めたか、国民民主党・玉木代表…山尾志桜里vs伊藤孝恵“女の戦い”にウンザリ?

  4. 9

    STARTO社の新社長に名前があがった「元フジテレビ専務」の評判…一方で「キムタク社長」待望論も

  5. 10

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは