「本当はこわい排尿障害」高橋知宏著

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 中高年になると増えてくるおしっこの悩み。頻尿などが起きても“年だから”と諦めてしまう人も少なくない。しかし、排尿障害の症状はこれだけにとどまらず、陰部のかゆみや胃痛、めまいといった、おしっことは無関係に思える症状まで引き起こすこともあるのだという。

 著者のクリニックには、全国から年間1000人の患者が排尿障害の治療に訪れる。その多くが、長い間原因不明の不調に悩まされてきた人々だ。60代の男性患者は、陰嚢のかゆみに悩まされていた。インキンだと思い込んで消毒をしていたが、かゆみはひどくなるばかり。著者のクリニックを訪れたときには、あまりのかゆさにかき壊した陰嚢が、赤く腫れ上がっている状態だったという。

 実はこのひどいかゆみも、排尿障害による症状だった。患者の腹部エコーを撮ってみると、膀胱の出口が白っぽく写っていた。これは膀胱括約筋などが硬くなり、柔軟性が失われている証拠。膀胱の出口が十分に開かないことによる、排尿障害が起きていたのだ。

 この状態で尿が押し出されると、膀胱の筋肉に負担がかかって膀胱の出口が激しく振動する。そして、尿が前立腺の中でジェット水流のように渦を巻き、粘膜を傷つけて慢性前立腺炎も引き起こす。このような状態が続くと、微細な痛みも起こるようになるが、人間はその痛みをかゆみとしてとらえてしまうことがある。膀胱や前立腺の神経は脊髄を介してあらゆる知覚神経につながっているため、思いもよらぬ部位に症状が表れることがあるのだ。排尿障害を自覚していない患者も少なくないと著者。長引く不調に悩まされている中高年は、排尿障害を疑ってみては。

 (集英社 800円+税)

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