「怪盗ルパン 二つえくぼの女」モーリス・ルブラン著 保篠龍緒訳

公開日: 更新日:

 物語は、ある夫婦が所有するヴォルニック城という古城の塔の上で、有名な歌姫エリザベス・オルエンが歌っている最中に突如倒れるところから始まる。

 来客40人ばかりが見守るなかで倒れたエリザベスは、肩から胸にかけては鮮血がほとばしっており、すでに息絶えていた。しかもエリザベスがしていた首飾りも忽然と消えており、誰ひとり怪しい人影を見た者もいなかった。そして、犯人もわからぬまま12年の歳月が経過したある日、怪盗グラン・ポールを追うジョルジュレ刑事が、グラン・ポールの情婦である金髪のクララを追いかけて、謎の人物ラウールと遭遇したことを発端に、ヴォルニック城の事件がもう一度掘り起こされることになるのだが……。

 1905年から始まり1941年の著者の死によって幕を閉じた怪盗ルパンの物語は、「怪盗紳士ルパン」「奇巌城」など多くの人気作があるが、本作の原書は後期に書かれたもの。ルパンシリーズの訳書を数多く手がけた保篠龍緒独特の講談調の語り口が、河出書房新社のレトロ図書館シリーズに加わる一冊として、時を経て復活した。ファン待望の書。

(河出書房新社 1950円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋