あぁ魅惑の横丁路地裏本特集

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「東京懐かし写真帖」秋山武雄著、読売新聞都内版編集室編

 人間、年を重ねてくると、なぜかネオンきらびやかな表通りよりも、やや薄暗い横丁や路地裏に引かれていく。人生経験を積んで、その魅力に気づくようになったためか、それとも人生につまずいた者でも受け入れる横丁や路地裏の包容力ゆえか。今週はそんな横丁や路地裏をテーマにした新書・文庫を紹介する。

 東京・浅草橋の老舗洋食屋の店主である著者は、仕事の合間に下町の街角や庶民の日常を写真に収め続けてきた。70年近く撮りためてきたその作品の中から、選りすぐりを紹介しながら、懐かしい東京の風景・風物を語るフォトエッセー。

 昭和32(1957)年の「羽根をさがす子供」と題された写真は、路地で遊んでいた少年たちを撮影した一枚。塀を越えてよその家の庭に入ってしまったバドミントンの羽根を探して、3人は板塀の下の隙間から、そしてもう1人はしゃがみ込んだ仲間の背中に乗って塀の上の隙間から、必死に探している様子をとらえる。写真に写るラケットもまだ新しそうで、羽根を真剣に探す少年たちの切実さが背中越しに伝わってくる。

 当時は車も少なく、ビー玉やメンコ、ベーゴマ、ちょっと広ければ野球まで、道路は「子供天国だった」と追想する。

 昭和39年の「嫁入りの日」は、仲人に手を引かれ近所をあいさつして回る花嫁姿の妹を撮影。商店街にかっぽう着姿のおばさんや子供たちが集まり、祝福している。昭和62年撮影の「ご近所さん」は、食事会を開いた記念に路地裏に並んで撮影されたもの。間もなく平成になろうかという昭和の終わり、下町ではこうした血の通った付き合いがまだ残っていたことに驚かされる。

 他にも、上野駅で寝台列車の切符販売を待つ長蛇の列を撮影した「切符販売を待つ人たち」(昭和39年)など、今では見られない風景が多数。中でも横丁・路地裏で撮影された作品が多く、東京の庶民にとって横丁・路地裏が大切な生活空間であったことがうかがえる。

 (中央公論新社 1100円+税)

「消えゆく横丁 平成酒場始末記」藤木TDC文、イシワタフミアキ写真、山崎三郎編

 消えてしまった、あるいは消えつつある全国各地の酒場横丁、飲食店街の在りし日の姿を記録したフォト紀行。

 池袋・東口の巨大な高層ビルの背後に張り付くように営業していた三角形の飲食店街「人世横丁」。近くの「美久仁小路」や「栄町通り」とともに終戦後、駅前の露天街の店が再開発で移転してできた横丁だ。著者が通っていた1990年代は往時の賑わいが嘘のようにさびれていたが、2000年代になると横丁ブームで復活。しかし、それもつかの間、所有者が土地を売却したため08年に全店が一斉に閉店し跡形もなくなった。

 ほか、新宿の「彦左小路」や北区「さくら新道」など都内をはじめ、宮城や山梨など地方の消えた横丁から、大阪・十三の「ションベン横丁」など再生に成功した横丁まで、30余の横丁を歩く。 (筑摩書房 920円+税)

「新宿二丁目」伏見憲明著

 東西約300メートル、南北約350メートルの区画内に、約400店ものLGBT関連の店が密集する「新宿二丁目」。自身も同地でゲイバーを営む作家の著者が、街の知られざる歴史に迫るノンフィクション。

 ゲイバーという呼称がなかった戦前にも、同様の酒場や待合は存在し、新宿には元女形が営む「夜曲」や「ユーカリ」という店があった。

 二丁目にゲイバーが集まるきっかけとなったのが昭和26(1951)年、松浦貞夫という人物が開いた「イプセン」だった。

 松浦氏自身は「ゲイバーなど開くつもりはなかった」というが、店主のゲイの友人らが集まり図らずもゲイのたまり場と化し、同店の成功を機に、付近に続々とゲイバーが誕生していったという。生前の松浦氏への取材など、丹念な取材で世界でも稀な街の歴史をたどる。

 (新潮社 820円+税)

「京都の通りを歩いて愉しむ」柏井壽著

 京都の町は俗に碁盤の目と呼ばれるように、南北と東西の通りが縦横に整然と並び、縦と横の通り名を組み合わせれば簡単に場所が特定できるようになっている。そんな通りの見どころを、生粋の京都人である著者が紹介する散策エッセー。

 京都っ子にとって、夷川通りといえば家具屋街。結婚が決まると皆、夷川通りに出向いたという。そこからしばらく西へ歩くと寺町通りにぶつかり、その南東角には茶舗「一保堂」があり、いり番茶がお勧めだ。

 方角に迷ったら民家の庭を見るとよい。鬼門封じとして、北東角に柊か南天の木を植えている。ビルや駐車場の一角に白砂や白石を敷き詰めているところがあれば、そこが北東角の印だ。丸太町通りから五条通りまで、東西を走る約20の通りを紹介。路地裏の小さな祠や老舗菓子店など、歩くからこそ出合える京都を伝える。

 (PHP研究所 900円+税)

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