人生100年時代の医療と病気の本特集

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「Drヤンデルの病院選び」市原真著

 病気もけがも、たいていは予告なしにやってくる。せめて、病気や病院について情報をインプットして、不測の事態に備えよう。すごくためになる情報から、かしげた首が戻らないような情報まで、玉石とりまぜてご紹介。



 病理診断医である著者は、「いい病院」とは「通いやすい病院」だという。「通いやすい」の内容として、家や職場から近い、医者がなんだか信用できる、などを挙げるが、案外重要なのが「医者以外のスタッフの指示・対応が適切」であること。その基準は「私の病気や行動について、帰宅後に使える具体的なアドバイスをくれたかどうか」である。

 例えば、リハビリ終了後、理学療法士が家でもできるストレッチの方法をきちんと解説してくれる病院の医療を著者は信用する。また、病院に行くとき、自分の症状にフィットした診療科を選ぶことが大切。例えば「セカンドオピニオン科」のように「病院に張り出されている科の名前がチャランポランな病院」は詐欺師がつくった病院と疑ったほうがいいそうだからご用心。

 病のソムリエ「ヤムリエ」が病院選びのコツを教授。

(丸善出版 1600円+税)

「仮病の見抜きかた」國松淳和著

 病院のカフェで、内科医の私はある患者の70枚にも及ぶ紹介状を整理していた。数々の医療機関から「仮病」とされていた患者である。

 患者は地元では有名な暴走族の元リーダーだった。知人の建設会社を引き継いで多忙を極めていて、ここぞというときに強烈な腹痛を起こすが、すぐ治る。昼間は忙しいのでがまんして夜間の救急外来を受診、ということを繰り返していた。虫垂炎の疑いで準緊急オペになったら、「退院したい」と言い出したこともあったようだ。

 患者と話をするうちに、ある病名が浮かび上がってきた。と、そのとき連れの女性が「家族性地中海熱ですか?」と言い、驚いた。(「クロ」)

 一見、仮病に見える患者と向き合って、患者の表情、姿勢、動作、行動などから症状をくみ取って、真の病名を探り、治療に当たる臨床医を描いた10編の医療ノベル。

(金原出版 2000円+税)

「世にも危険な医療の世界史」リディア・ケイン&ネイト・ピーダーセン著 福井久美子訳

 生き延びるためなら、人間はどんな実験的な治療法にも耐えられる。金属なのに常温で液体になる水銀には神秘的なイメージがあり、不死のカギがあると期待した錬金術師が、水銀入りの薬を調合したために、秦の始皇帝は水銀中毒で死んだ。アメリカ大統領に就任する前のリンカーンは「胆汁性頭痛」に悩まされ、液体水銀などで作られた青い丸薬を服用していた。うつ病による怒り発作や歩行障害などの症状は水銀中毒の症状と重なる。

 20世紀初頭、ストリキニーネ(写真)には体を活性化する効果があると考えられていた。実際は過剰摂取すると筋肉痛や攣縮を起こす危険な薬なのに。菜食中心の食生活のため腹部の張りなどに苦しんでいたヒトラーは、ストリキニーネ入りの整腸剤を服用していたが、晩年はとっぴな行動を取るようになった。

 ペテンやインチキがまかり通った医療の歴史。

(文藝春秋 2200円+税)

「Die革命」奥真也著

 近年、医療技術は急激な進歩を見せており、診断、手術、救命救急などあらゆる分野で医療は次のステージへのぼり、まさに「死なない時代」へと突入しようとしている。

 たとえば診断テクノロジー。米国で実用化されている乳がんの画像診断では、熟練医師が1人分の画像を判断するのに10分かかるのに対し、8万人分もの読影をわずか10分で行い、面積にして0・01%にも満たない微小な腫瘍でも即時に発見可能だという。AI疾患スクリーニングでは緑内障を含む眼疾患を94・5%の確率で言い当てる。

 創薬の分野でもビッグデータとAIの活用により、ある病気にかかりやすい人たちに共通する体質の存在を意外な場所から見つける可能性が高まり、薬の副作用も患者の病歴や体調を加味して、より精密な副作用予測ができるようになるという。2020年代のAI医療からその恩恵を受けるために気を付けるべきことまで詳細に解説する。

(大和書房 1600円+税)

「爆発する歯、鼻から尿」トマス・モリス著 日野栄仁訳

 1917年の夏、アメリカ・ペンシルベニア州のD・A牧師は、急に耐えがたいほどの歯痛に襲われ、暴れ出した。翌朝9時、牧師は錯乱状態のまま歩き回っていたが、突然、銃声のような音がして牧師の歯が破裂した。その瞬間、痛みは消え、牧師はベッドに入った。目覚めたとき、牧師は理性も体調も取り戻していた。歯の詰め物をするときに使われた薬が原因だとする説などがあるが、真相は不明である。

 ロードアイランド州に住むマリア・バートンは27歳。1820年6月に月経が止まり、喀血した。藪医者が毎日かなりの量の血を抜き、催吐剤を飲ませたため、子宮脱を起こし、排尿がまったくできなくなった。2年後、彼女の耳から尿が出るようになり、やがてはへそや鼻から排尿するようになったという。

 古い医学文献に紹介された奇妙な病気やけがの実話を満載。

(柏書房 2200円+税)

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