「むらさきのスカートの女」 今村夏子著
1週間に1度くらいの割合で、パン屋にクリームパンを買いにくる「むらさきのスカートの女」。近所の公園には「むらさきのスカートの女専用シート」と名付けられたベンチまである。彼女は勤め先がころころ変わって働いたり働いていなかったりする。
「わたし」は彼女と友達になりたいと思って、自分の職場に彼女を就職させようと試みた。いつものベンチに無料の求人情報誌を置くと、彼女は目に留めてぱらぱらめくっているが、蛍光マーカーで丸をつけてあるのに、関係ない石鹸工場やら肉まん工場に面接に行くばかり。「わたし」の職場に面接の申し込みをするのに3カ月かかった。
得体の知れぬ女を観察し続ける奇妙な物語。第161回芥川賞受賞作。
(朝日新聞出版 1300円+税)