「我らが少女A」髙村薫著

公開日: 更新日:

 物語の発端となったのは、27歳の風俗店アルバイトの女を、同棲していた28歳の男が上池袋で殴り殺した事件。被害者の女の名を上田朱美といい、加害者となった男の証言によって、彼女が12年前に迷宮入りした元中学校美術教師の殺人事件現場に居合わせていた可能性が浮上した。亡くなった朱美は、果たして美術教師殺人事件の加害者だったのか。

 12年前にこの事件を担当し、今は警察大学校の教授となった合田雄一郎、事件の被害者の孫である佐倉真弓、真弓をストーカーしていた浅井忍、朱美に憧れを抱いていた小野雄太らが、朱美の死を契機にかつての記憶をたどり始める。それぞれの記憶の断片にあった少女だった頃の朱美の姿が、少しずつ見えてくるのだが……。

 人気の合田雄一郎シリーズ最新作。本作で合田は、捜査の第一線から退き、警察大学校の教授となって登場する。かつて解決できなかった事件に対して、何かを見落としていたのではないかという合田の悔恨や、事件後に被害者家族や被疑者家族がずっと引きずってきた思い、さらに周囲に及ぼす波紋に至るまでが丁寧に描かれている。 (毎日新聞出版 1800円+税)


【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち

  4. 4

    YouTuber「はらぺこツインズ」は"即入院"に"激変"のギャル曽根…大食いタレントの健康被害と需要

  5. 5

    クマと遭遇しない安全な紅葉スポットはどこにある? 人気の観光イベントも続々中止

  1. 6

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲

  4. 9

    「渡鬼」降板、病魔と闘った山岡久乃

  5. 10

    元大食い女王・赤阪尊子さん 還暦を越えて“食欲”に変化が