「我らが少女A」髙村薫著

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 物語の発端となったのは、27歳の風俗店アルバイトの女を、同棲していた28歳の男が上池袋で殴り殺した事件。被害者の女の名を上田朱美といい、加害者となった男の証言によって、彼女が12年前に迷宮入りした元中学校美術教師の殺人事件現場に居合わせていた可能性が浮上した。亡くなった朱美は、果たして美術教師殺人事件の加害者だったのか。

 12年前にこの事件を担当し、今は警察大学校の教授となった合田雄一郎、事件の被害者の孫である佐倉真弓、真弓をストーカーしていた浅井忍、朱美に憧れを抱いていた小野雄太らが、朱美の死を契機にかつての記憶をたどり始める。それぞれの記憶の断片にあった少女だった頃の朱美の姿が、少しずつ見えてくるのだが……。

 人気の合田雄一郎シリーズ最新作。本作で合田は、捜査の第一線から退き、警察大学校の教授となって登場する。かつて解決できなかった事件に対して、何かを見落としていたのではないかという合田の悔恨や、事件後に被害者家族や被疑者家族がずっと引きずってきた思い、さらに周囲に及ぼす波紋に至るまでが丁寧に描かれている。 (毎日新聞出版 1800円+税)


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