「夢見る帝国図書館」中島京子著

公開日: 更新日:

 小説家志望のフリーライター「わたし」が、国際子ども図書館の取材をした帰り道、公園で喜和子さんなる人物に遭遇するところから物語は始まる。喜和子さんは根っからの本好きで、なぜか「わたし」に図書館が主人公の小説を書くよう勧めた。図書館に通いがてら喜和子さんと定期的に顔を合わせるうち、戦後、上野で過ごしてきた喜和子さんの過去と、日本で最初の国立図書館がたどってきた歴史が少しずつ見え始める。しかし、「わたし」が小説家となり、生活も変わる中で次第に喜和子さんと疎遠になってしまう。ふと会いたくなって立ち寄った上野に、すでに喜和子さんの家はなかった。「わたし」はつてをたどって、喜和子さんを探し始めるのだが……。

「小さいおうち」で直木賞を受賞後、「妻が椎茸だったころ」で泉鏡花賞、「長いお別れ」で中央公論文芸賞など、近年賞ラッシュの著者による最新作。主人公は、喜和子さんに導かれるようにして図書館の歴史をひもとく。資金難や戦争などをかいくぐり、本を愛する人を見守りながら生き延びてきた図書館に対する万感の思いが、本書にはつまっている。

 (文藝春秋 1850円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?