人生の分かれ道を描くエッセー本特集

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「バカになれ」齋藤孝著

 ふと、これからの人生、どう生きようかと考えることがある。路線変更せずにこれまで通り突っ走るか、それとも、横目で見ていた別の道に進路を変えるか……。サイコロを振るより頼りになりそうな本を読んでみては?

 NHK・Eテレの「香川照之の昆虫すごいぜ!」には驚かされる。香川照之がなんとカマキリの着ぐるみを着て、子供相手にハイテンションで昆虫について解説したり、野山を駆け回って昆虫を追ったりしている。香川は東大卒のインテリで、人気俳優であり、歌舞伎俳優でもあるが、昆虫だけでなく、ボクシングにも造詣が深い。絶対的に「バカ」な領域を持つことで、厳しい仕事とのバランスが取れるのではないか。リフレッシュできるから新鮮な気持ちで仕事に取り組める、という好循環が生まれているのでは。

 50代は幸福度の格差が最大になる年代で、これでよかったのかという不安を持つ人も少なくない。そんなとき、「バカになれ!」という呪文が人生後半の扉を開いてくれるのだ。

 50歳から人生に勢いを取り戻すために読みたい一冊。

 (朝日新聞出版 750円+税)

「俺たちはどう生きるか」大竹まこと著

 著者は就職したことがなく、若い頃はクラブのボーイ、日雇いなどをしていた。カフェの女性店長に「君は何をしたいの」と聞かれ、「まあ役者かなあ」と答えたら、俳優小劇場を紹介してくれた。

 母に金を無心して入学したが、街をさまよい歩いて、行き交う人々を傍観者のように眺めていた。耳元にはいつも「君は誰かね」という声が聞こえていた。著者は40代前半まで投票には行かなかったが、「TVタックル」で政治を語ることが多くなったので、投票に行くようになった。

 2017年の都議選は期日前投票をした。これからの日本は若い人たちが年寄りを支えなくてはならない。自分の一票は死に票になるかもしれないが、何の役に立たずとも、年寄りは若い人のために投票に行くのだ。70歳を迎えたが、自分は若者に伝える言葉を持たないとつぶやく大竹まことのエッセー。

 (集英社 820円+税)

「奴隷の哲学者エピクテトス人生の授業」荻野弘之著かおり&ゆかり漫画

 ローマ時代のストア派を代表する哲学者エピクテトスは、紀元50~60年ごろに、奴隷の両親の子として生まれた。本人も奴隷だったが、解放されてから私塾を開いて生計を立てた。彼は、平凡な庶民がいかにして真の自由を享受し、幸福な生活を手に入れることができるかを考え続けた。

 例えば、彼の格言集「提要」19には「自由に至る唯一の道は『我々次第でないもの』を軽く見ることである」とある。地位や名誉や財産といったものは自分の力でどうにかできるものではない。それらを幸せの基準としたら、それらを得られなければ満たされない。また、手に入れればそれを奪われることを恐れるから、それらにとらわれて生きるしかない。欲望の対象にしていいのは、自分がコントロールできるものだけであると説く。

 生きづらい世の中を「よく生きる」ための哲学。

 (ダイヤモンド社 1400円+税)

「面白いとは何か?面白く生きるには?」森博嗣著

 現代では何もかも簡単になってしまったが、それは「面白さ」にブレーキをかける。満足というものは簡単ではない何かを成し遂げた後に得られるもので、その「達成」=「面白さ」なのだ。そしてアウトプットする「面白さ」はインプットする「面白さ」の何十倍も大きい。

 例えば同人誌即売会コミケに何十万人も集まるのを見てわかるように、漫画や小説をインプットして楽しむのではなく、自分で作品をアウトプットする人が増えている。ネットにアウトプットする人も増えているが、バーチャルでは「面白さ」が得られないことに気づいてリアルの「面白さ」への揺り戻しが見えている。「面白さ」は最初は小さいが、自分が「面白い」と思うものを大事にして育てることで大きくなるのだ。

「面白い人生」にするためにはどんな視点を持てばいいか教えてくれる。

 (ワニブックス 830円+税)

「人生は、棚からぼたもち!」小林まさる著

 NHKの「あさイチ」などで料理研究家としておなじみの著者。だが、その道に踏み込んだのは70歳のときだった。1933年、樺太で生まれた小林は、15歳のとき、一家で日本に引き揚げる。食べていくために鉱業学校を出て、三井鉱山に就職した。34歳のとき、「勢い」で結婚するが3年ほどで離婚してシングルファーザーに。後に妻とよりを戻すが、57歳のときに先立たれる。

 息子が結婚し、嫁が料理研究家になったが、アシスタントが足りない。そこで「そんなの、俺がいくらでもやってやるよ」と手を挙げた。そして、自分までテレビ出演することに。思いがけないことの連続だが、子供の頃は山で山菜を採ったり、川で魚を捕って食べるのが好きだった。振り返ってみると、人生はつながっている。

 60歳までは人生の下ごしらえで、60歳からその調理が始まると語る著者の半生記。

 (東洋経済新報社 1400円+税)

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