改めて読んでみたい万葉集の本特集

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「入門 万葉集」上野誠著

 新元号・令和の典拠となった「万葉集」がブームだ。学生時代に手に取ったことがあっても、「どんな歌だっけ?」と、忘れてしまった人も多いだろう。そこで今週は、さまざまな角度から光を当て、解説した万葉集本をご紹介。エロ、語感、はたまた万葉集に隠された真実まで、万葉の世界に浸ってみよう。

 8世紀の中葉に生まれた歌集「万葉集」は、いわば、歌でつづられたアルバムのようなものだという。現代の人たちがスマホで写真を撮るように、古代人は出来事や事件、気持ちを心に留める手段として歌を詠んできた。

 宴で詠まれた楽しい歌が多く収められているのは巻16。「石麻呂さんに申し上げます…… 夏痩せには良いというものですよ。鰻を捕ってお食べなさい」からは、夏の日の一コマが見えてくる。

「みんなは萩が秋を代表する花だと言う。ならば私は……すすきだ、秋の花はといおう!」からは多数派に負けないぞという意気込みが。また、巻11の「影法師のように 私は痩せてしまいましたよ。会わない日が久しくなりましたので」は、恋やつれの“つぶやき”が収められている。個性的な書き下し文と現代語の超訳で万葉の世界を紹介する。 (筑摩書房 760円+税)



「中西進の万葉みらい塾」中西進著

 日本各地の小中学校で行った出前授業「中西進の万葉みらい塾」での子供たちとのやりとりを収めた一冊。

 子供たちは「大宮の 内まで聞こゆ 網引きすと 網子整ふる 海人の呼び声」は、読んでいて気持ちいい歌だと感想を持った。著者はその理由を、最初の言葉がすべてア行になっているからだと説明。ア行は大きく口を開けたり動かすため、リズムを感じて気持ちがよくなるのだ。一方、文字が面白い歌もある。例えば、「冬すぎて 春来たるらし 朝烏さす」の「朝烏」を「あさひ」と読むのは、万葉人は太陽の中に烏がいると考えたから、と説明。

 ほかにも景色は気持ちを表していることや、万葉人にとっては「悲しい」も「愛しい」も同じ意味で、悲しい気持ちは愛しているかどうかによって起こると紹介するなど、万葉集を通して生きる上のヒントを伝える。

 (朝日新聞出版 1500円+税)



「1分音読『万葉集』」齋藤孝著

 万葉集ができた時代は、まだ、ひらがなもカタカナもなく、声に出して詠んだものが口承され、のちに文字として残された。そんな古来のことばの響きを楽しむには声に出して読むことだという。本書では音読したい歌とともに、日常で使える万葉フレーズを解説する。

「君が行く 道のながてを 繰り畳ね 焼き亡ぼさむ 天の火もがも」は、「道を畳んで焼く」という奇抜な発想と「もがも」の響きがミソ。もがもは「欲しい」を意味し、

「ビールもがも!」などと使えば万葉集の世界に浸れるというもの。

 何かを思い立ったときのフレーズは「いざ、潮もかなひぬ!」(潮がいい具合に満ちてきた)、ヤケ酒を飲むときは「験なき 物を思はずは……」(考えても詮ないから……)など、77フレーズを収録。歌人たちの人物相関図付き。

 (ダイヤモンド社 1300円+税)


「エロスでよみとく万葉集 えろまん」大塚ひかり著

 万葉集には日本ならではの特徴があり、それを一言で表現するなら「エロ」だという。現代人から見ると驚くようなエロさだが、それは当時の風俗習慣であり、今の感覚につながっているものも少なくない。例えば、「人が見えない下着のひもを開けている。こうしてあなたを待っている日が多いの」という歌のベースにあるのは、「下着のひもが解けるのは恋人と会える前兆」というジンクス。さらには「早くセックスしたいからパンツを脱いで待ってるわ」という現代人にも通じる欲望の吐露が含まれている。

 ほかにも「君、センスいいね。俺、天皇」というナンパ歌、「単身赴任先で愛人に入れあげていたら本妻が乗り込んできた」、はたまた「こんなに恋焦がれるくらいなら いっそ毎日あの娘が踏む土になりたい」という妄想男子の歌まで。衝撃の古典超訳。

 (新潮社 1300円+税)



「万葉集に隠された古代史の真実」関裕二著

 万葉の時代というのは「親蘇我派と反蘇我派の対立の歴史」であり、8世紀後半には「藤原」対「大伴」と形を変え、藤原だけが栄える世が到来しつつあった。そこで編まれた万葉集は、一般的に知られるような「牧歌的」な歌集などではなく、政敵に滅ぼされていった人々の恨みの言葉で満ちているという。

 例えば、筑紫歌壇で小野老は「あおによし 寧楽の京師は 咲く花の……」と、平城京の繁栄を歌いあげている。しかし、筑紫歌壇は都を追われた反藤原派の集まりであり、小野老も親蘇我派。何らかの理由で藤原の手先になったものの「私はスパイだから気を許すな」と伝えようとしたのでは、と推測する。

 ほかにも、大伴旅人が酒にまつわる歌を数多くつくった理由、「石川女郎」は蘇我氏の隠語だったなど、歴史をひもときながら、万葉集の裏側に迫る。

 (PHP研究所 800円+税)



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