「スワン」呉勝浩著

公開日: 更新日:

 物語は、巨大ショッピングモール「スワン」で起こった無差別銃撃事件から始まる。3人組の犯人は、自作の拳銃と家から持ち出した日本刀で、次々に人々を襲った末に死んだ。死者21人、重軽傷者17人という惨劇の生存者に、高校生のいずみがいた。

 いずみは当初被害者として扱われたが、同じく事件に遭遇していた同級生の小梢が、次は誰を殺すかをいずみが犯人に指名したと証言したことでバッシングが始まった。

 そんな中、いずみのもとに、生存者に参加を呼び掛けるお茶会への招待状が届く。被害者の息子である、ある会社の社長が、事件当日の現場でどんなことが起きていたのかを調べるために個人的に弁護士に依頼して会を開いたというのだ。参加したのは、いずみを含めた5人。果たして、当日何が起きていたか、その真相を突き止めることができるのか……。

 2015年に「道徳の時間」で第61回江戸川乱歩賞を受賞してデビューして以来、話題作を続々と発表している著者による最新作。被害者はとっさにどう行動し、生き残った者は事件をどう乗り越えるのか。主人公が覚悟を決めるラストシーンは圧巻だ。

(KADOKAWA 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ