「経済学はどのように世界を歪めたのか 経済ポピュリズムの時代」森田長太郎著

公開日: 更新日:

 アダム・スミスの「国富論」刊行を起源として経済学が始まり、以来約240年の間に新しい学説が次々と生み出されてきた。しかし大学で経済学を学んだ著者は、この学問に対して何か論理を歪曲しているという直感的な不信感を持っていたという。そのもやもやとした感じは、卒業後、大手証券会社で金融の現場に入ってからも拭えなかった。

 本書は経済学のこれまでの歩みを振り返りながら、社会と経済学及び経済政策の関係を見直し、現在の経済学が陥っている問題を明らかにしようというものである。

 アダム・スミスの次に経済学に大きな画期をなしたケインズのマクロ経済学は紆余曲折を経て1980年代に大きな限界に突き当たるが、新たな活動の場を求めて金融政策に深く関わっていく。そこで唱えられた「金融万能政策」が折からの「経済ポピュリズム」の流れに乗って肥大化していく――。著者はこうしたプロセスをたどりながら、安易にポピュリズムに流され、リーマン・ショックのような金融危機を招いた経済学と経済学者の「不作為の罪」を批判する。

 机上の論ではなく、現場から発せられた意見だけに傾聴に値する。

(ダイヤモンド社 2000円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」