「善意という暴力」堀内進之介著

公開日: 更新日:

 複雑化する現代の社会システムで起きる間接的、潜在的な不公平・不正義=構造的な暴力は、誰かの悪意に基づくものではない。それを生み出す構造自体はむしろ善意によって動かされていると政治社会学者の著者は指摘する。

 本書は、国家のような集権的な支配ではなく、分散的でネットワーク的な母性的支配がもたらすそうした暴力について考察したテキスト。

「不謹慎だ!」「当事者の身になってみろ!」と何かにつけて自分には関係のない誰かを糾弾する声が日増しに大きくなっている。人をそうした行為に仕向ける進化の過程で獲得した認知システムや、「相手の気持ちがよく分かる」という共感力が引き起こす罠など。

 人間と社会システムの双方に潜む現代の病理をあぶり出し、変革のための方法と理念を提示する。

(幻冬舎 780円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾