「善意という暴力」堀内進之介著
複雑化する現代の社会システムで起きる間接的、潜在的な不公平・不正義=構造的な暴力は、誰かの悪意に基づくものではない。それを生み出す構造自体はむしろ善意によって動かされていると政治社会学者の著者は指摘する。
本書は、国家のような集権的な支配ではなく、分散的でネットワーク的な母性的支配がもたらすそうした暴力について考察したテキスト。
「不謹慎だ!」「当事者の身になってみろ!」と何かにつけて自分には関係のない誰かを糾弾する声が日増しに大きくなっている。人をそうした行為に仕向ける進化の過程で獲得した認知システムや、「相手の気持ちがよく分かる」という共感力が引き起こす罠など。
人間と社会システムの双方に潜む現代の病理をあぶり出し、変革のための方法と理念を提示する。
(幻冬舎 780円+税)