「黒武御神火御殿」宮部みゆき著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、江戸は神田三島町にある袋物屋・三島屋。この店には「黒白の間」という座敷があり、そこで一風変わった百物語が行われている。心のうちに抱えきれない奇怪な話を持った話し手が招かれ、聞き手は話を一切口外しないという約束で始まったこの百物語は、伊兵衛の姪・おちかが長年聞き手を務めてきた。だが、おちかが嫁に行ったことを契機に伊兵衛の次男・富次郎が新たな聞き手を志願した。これまで語り手を周旋してきた灯庵は、富次郎の力量を危ぶみつつ、またもや訳ありの人たちを連れてくるのだが……。

 人気の三島屋変調百物語シリーズ第6弾。不可解な色情が一家離散を招いた「泣きぼくろ」、女たちが絶景の丘に登らない理由を語った「姑の墓」、飛脚が道中に遭遇した奇異な出来事を描いた「同行二人」などの4編が収録されている。表題作「黒武御神火御殿」は、神隠しに遭った6人の男女が迷い込んだ不可解な屋敷の物語。日常から非日常に踏み込んでしまった人間が全力で魔の世界から逃げようとする決死の脱出劇に、聞き手の富次郎と一緒に引きずり込まれること必至である。

(毎日新聞出版 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    暑さを忘れて謎解きに没頭!ミステリー文庫特集(3)プロが厳選する年に1度の短編集 「本格王2026」本格ミステリ作家クラブ選・編

  2. 2

    漫画一筋の人生は日本の漫画史そのもの「劇画の巨星 川崎のぼる伝」読売新聞西部本社文化部著

  3. 3

    古本あらえみし(宮城・仙台市)本棚ばかりか通路も押し入れも神棚だったところも本、本、本!

  4. 4

    「身近にあるドラッグ的なものや脱法性に自覚的になることが大切」──「脱法」磯部涼氏

  5. 5

    「テーマの研究不正は、私が以前バイオ系の研究職だった経験が基になっています」──「風車と巨人」岩井圭也氏

  1. 6

    「『鮎戦記』有岡只祐」世良康著

  2. 7

    コ本や(神楽坂)店主は東京芸大大学院出身アーティストで中原中也賞受賞の詩人

  3. 8

    「史上最強にわかりやすくて面白い ぶっ続け日本史講義10時間」伊藤賀一著/フォレスト出版(選者:中川淳一郎)

  4. 9

    第13話:ある金曜日のあの声 ~聴覚だけではおぼつかない~

  5. 10

    『本屋百景』『東京で驚いた』『見えない死神』──井上理津子さん×東えりかさん、新刊3冊から語り合う「街、人、ノンフィクション」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    萩本欽一〈34〉私の“運”論 大谷翔平のカネを使い込んだ通訳に「小さな声で『ありがとう』」

  2. 2

    高橋成美「渋幕→慶応」だけでは読み解けないズバ抜けた回転の速さ 世界選手権ペアで日本人初の銅メダル

  3. 3

    中居正広氏が熊本地震被災地を支援と報道 引退後も変わらないチャリティー精神と芸能界復帰の可能性

  4. 4

    松本若菜「ジュラシック・ワールド」吹き替え《棒読み》論争再燃…暗雲漂う主演ドラマに新たな逆風

  5. 5

    神戸への“聖地帰還”めぐり騒然…山口組・司組長「7年ぶりの里帰り」は実現するか

  1. 6

    高市官邸「被災地利用PV」が首相の命取りに? 安倍元首相“コロナおこもり動画”の二の舞を自民党が危惧

  2. 7

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 8

    熊本地震の被災地利用に続き…首相官邸が今度は国民栄誉賞で「高市PR動画」作成し大炎上

  4. 9

    年金生活者を悩ませる墓問題 維持費も「墓じまい」の費用も払えない人はどうすればいいのか?

  5. 10

    中村倫也が「風、薫る」に大貢献…妻・水卜麻美アナとの「ずっと仲良く」「にこやかな」近況