「黒武御神火御殿」宮部みゆき著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、江戸は神田三島町にある袋物屋・三島屋。この店には「黒白の間」という座敷があり、そこで一風変わった百物語が行われている。心のうちに抱えきれない奇怪な話を持った話し手が招かれ、聞き手は話を一切口外しないという約束で始まったこの百物語は、伊兵衛の姪・おちかが長年聞き手を務めてきた。だが、おちかが嫁に行ったことを契機に伊兵衛の次男・富次郎が新たな聞き手を志願した。これまで語り手を周旋してきた灯庵は、富次郎の力量を危ぶみつつ、またもや訳ありの人たちを連れてくるのだが……。

 人気の三島屋変調百物語シリーズ第6弾。不可解な色情が一家離散を招いた「泣きぼくろ」、女たちが絶景の丘に登らない理由を語った「姑の墓」、飛脚が道中に遭遇した奇異な出来事を描いた「同行二人」などの4編が収録されている。表題作「黒武御神火御殿」は、神隠しに遭った6人の男女が迷い込んだ不可解な屋敷の物語。日常から非日常に踏み込んでしまった人間が全力で魔の世界から逃げようとする決死の脱出劇に、聞き手の富次郎と一緒に引きずり込まれること必至である。

(毎日新聞出版 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」