「黒武御神火御殿」宮部みゆき著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、江戸は神田三島町にある袋物屋・三島屋。この店には「黒白の間」という座敷があり、そこで一風変わった百物語が行われている。心のうちに抱えきれない奇怪な話を持った話し手が招かれ、聞き手は話を一切口外しないという約束で始まったこの百物語は、伊兵衛の姪・おちかが長年聞き手を務めてきた。だが、おちかが嫁に行ったことを契機に伊兵衛の次男・富次郎が新たな聞き手を志願した。これまで語り手を周旋してきた灯庵は、富次郎の力量を危ぶみつつ、またもや訳ありの人たちを連れてくるのだが……。

 人気の三島屋変調百物語シリーズ第6弾。不可解な色情が一家離散を招いた「泣きぼくろ」、女たちが絶景の丘に登らない理由を語った「姑の墓」、飛脚が道中に遭遇した奇異な出来事を描いた「同行二人」などの4編が収録されている。表題作「黒武御神火御殿」は、神隠しに遭った6人の男女が迷い込んだ不可解な屋敷の物語。日常から非日常に踏み込んでしまった人間が全力で魔の世界から逃げようとする決死の脱出劇に、聞き手の富次郎と一緒に引きずり込まれること必至である。

(毎日新聞出版 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手