北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「黒武御神火御殿三島屋変調百物語六之続」宮部みゆき著

公開日: 更新日:

 江戸怪談シリーズの第6弾である。シリーズとはいっても内容が続いているわけではないので、これまでの諸作を未読の人でも安心して手に取られたい。しかも前作で第1期が終了し、ここから第2期が始まるのだ。このシリーズを未読の読者が読み始めるのにちょうどいい。

 前作まで怪異と不思議な話を聞いてきたおちかが嫁に行ったので、本作から聞き手をつとめるのは三島屋の主人・伊兵衛の次男・富次郎。商いの修業先で喧嘩に巻き込まれ、大ケガして生家に戻ってきた富次郎は、当面することもないので聞き手を志願したわけだが、かくて第6巻の幕が開く。

 今回は全4話を収録しているが、第4話が本書の半分以上を占めるという異色の構成。それが表題作である。

 変わり百物語の語り手は、梅屋甚三郎。年は四十路かその手前くらいなのに、なぜか髪は真っ白。さらに右手の人さし指と中指の先が溶けたように欠けている。いったいどんな災難にあってこんな傷を負ったのか――というわけで、甚三郎の不思議な話が始まっていくが、その詳述は控えておく。

 相変わらず読ませることは言うまでもないが、問題は第1巻から10年以上が経つのに、合計でまだ28話にしかなっていないことだ。100話に到達するにはまだまだ時間がかかりそうなのである。私も年なので、最後まで見届けられそうにないのがさびしい。

 (毎日新聞出版 1800円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗