「セカンドステージ」五十嵐貴久著

公開日: 更新日:

 主婦が起業するというと以前はかなり難しかったが、近年ではSNSの発達などにより、だいぶハードルは低くなった。それでも男性の起業と比べると、家事・育児・介護との両立という課題がついて回るので、そう簡単ではないようだ。

【あらすじ】桜井杏子は結婚前に食品関係の会社で働き、それなりに責任ある仕事を任されていた。28歳で結婚し、そのまま仕事を続けるつもりだったが翌年妊娠して状況が一変。2年後に第2子を妊娠、子育てに忙殺されたまま専業主婦に。

 しかし子供たちが小学校と幼稚園に通い始め少し時間ができて、ふと思った。もしあのまま会社で仕事を続けていたら……。

 夫と子供の世話だけしていることに疑問を持った杏子はにわかに起業を決意。子育て中、いかに人の手を借りたかったか、そして疲れた体を少しでもラクにしたかったかという自分の経験を生かし、マッサージ師と家事代行の派遣業を始める。スタッフを揃え、携帯電話さえあれば資金のない自分でもできる。ただし2時間で5000円という格安なので、スタッフの給料も低い。

 そこで経験があって時間を持て余している老人たちをスタッフにすることにした。そして3年。さほど儲かりもしないが固定客も付き始めてきたのだが、問題はこの仕事をいまだ夫に内緒にしていることだ。いつバレるかと心配していると……。

【読みどころ】本書の魅力は、杏子を取り巻く個性的な老人の面々。暇を持て余し、噂好きの老人軍団は、しょっちゅう飲み会を開き、問題のありそうな家庭があると遠慮なしに首を突っ込んでいく。

 これには杏子も眉をひそめるのだが、そのうち彼らの優しさに自分も助けられることに。老人たちの心温まるおせっかいぶりが読みどころ。 <石>

(幻冬舎 650円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ