「あなたの人生、片づけます」垣谷美雨著

公開日: 更新日:

 片づけコンサルタント、あるいは整理収納アドバイザーという名前をよく目にする。物や部屋が片づかない原因を根本的に解決するためのノウハウやメソッドを伝授する役割だが、逆にいえば、人に相談しないと自分では片づけられない人が多いということだろう。

 なぜ片づけられないのか。その理由はさまざまだろうが、「片づけ屋」が主人公の本書には、4つのケースでその理由に迫っている。

【あらすじ】大庭十萬里は「部屋を片づけられない人間は、心の問題がある」がモットーのカリスマ的な片づけ屋。直接手を貸すのではなく、その状態をつくり出した人間の心を片づけていく。

 ケース1は30代OLの汚部屋。大手生命保険会社に勤める永沢春花は独り暮らしにはぜいたくな40平方メートルの1LDKのマンション住まい。しかし靴脱ぎには何層にも靴が重なり床にはさまざまなものが散らばり、キッチンはゴミの山と化している。まさに汚部屋。

 そこへ現れたのが十萬里。見るに見かねた母親が頼んだのだ。十萬里は春花が妻子持ちの上司と不倫していることを見抜き、その清算と春花自身の人生を取り戻すように導いていく。

 ケース2は、妻に先立たれた、家事能力ゼロの木魚職人。その次は、旧家の豪邸に住む老女で、いつ来るとも知れぬ孫や子どもたちのために大量の食器や食べ物をため込んでいる。

 最後のケース4は、最愛の息子を交通事故で亡くして以来一切の家事を放棄して、亡き息子の部屋だけを異様に奇麗に掃除し続ける主婦。

【読みどころ】いずれも心に深い傷を負いながらもどうしていいのか分からない。そんな彼らに十萬里はすぐに解決策を与えるのでなく、時間をかけて自らが問題に向き合うように導いていく。職人技が光るお掃除小説。 <石>

(双葉社 648円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  2. 2
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  3. 3
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

  4. 4
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 5
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  1. 6
    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

  2. 7
    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

  3. 8
    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

  4. 9
    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

  5. 10
    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終