「不条理を生きるチカラ」佐藤優、香山リカ著

公開日: 更新日:

少数者排除

 ともに1960年生まれで還暦を迎えた元外交官の作家と精神科医が語り合う「コロナ禍が気づかせた幻想の社会」(副題)。高度成長後、バブル時代のポストモダンブームに沸いた日本ではすべてを「シミュラークル」(模造品)とする相対主義が蔓延した。

 しかし同時代のソ連では「本音と建前が全然別で、同時に共産主義という大きな物語なんか誰も信じてない」。つまり日本とはまったく違う「すべてがポストモダン的」な現実があったという。

 そんな若き日を回顧しながらバブル崩壊からリーマン・ショックを経てコロナショックまでにいたる現代日本の歩みを、一見、対照的な2人の視点で縦横に論じ合う。マルクスやドストエフスキーからポストモダン思想、はてはNHKの安倍政権への「忖度」問題や「東京タラレバ娘」までを俎上に載せる。

 沖縄の基地問題でも、精神医療の現場でも、少数者排除を見て見ぬふりする動きが強まるばかりの日本社会。その不条理から逃げずに立ち向かおうというメッセージが明確だ。

(ビジネス社 1600円+税)

【連載】ウィズコロナ時代 本で読み解く経済の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です