「絶望を希望に変える経済学」アビジット・V・バナジーほか著 村井章子訳

公開日: 更新日:

経済予測

 昨年、史上最年少でノーベル経済学賞を受賞したフランス人女性と「世界の思想家100人」にも選ばれたインドの開発経済学者。この2人が組んで移民、不平等、環境などの重要問題について深くまで掘り下げたのが本書。つまりコロナ前に書かれた本だが、実はコロナ禍は「見過ごされてきた問題を無視できなくした」と見るべきだろう。

 たとえば本書はなぜ世間で経済学者は信用されないのかと自問する。テレビや公開シンポジウムなどに出てくる「エコノミスト」は大半が市場の楽観主義をあおる企業シンクタンク系のアナリスト。他方、まじめな経済学者ほど断定を避け、説明は長くなり、テレビはそれを避ける。IMF(国際通貨基金)が毎年発表する世界の経済予測も、優秀な専門家チームの仕事だが予想は当たったためしがない。あまりに複雑で不確実な現代の社会と経済に対して学者ができるのは、現状にいたる道のりを分析し、なお残る不確実性を明らかにすることなのだ。

 ありがちな即席の対談本とは一線を画す丁寧な議論。

(日本経済新聞出版 2400円+税)

【連載】ウィズコロナ時代 本で読み解く経済の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択