「72歳、今日が人生最高の日」メイ・マスク著 寺尾まち子、三瓶稀世訳

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 白髪のショートヘアとスリムな長身で、72歳の今も現役モデルとして活躍しているメイ・マスクは、イーロン・マスクの母。シングルマザーとして3人の子どもを育て上げ、孫にも仕事にも恵まれている今が人生最高の時と言い切る。

 長男イーロンは電気自動車や宇宙開発事業で知られる最先端の実業家。次男のキンバルは産地直送食材のレストランを経営し、長女で末っ子のトスカは映画のプロデューサー。それぞれが自分の道を歩いている。この母にしてこの子あり。栄養士とモデルの仕事で必死に子どもたちを育てたメイは、60歳を過ぎて白髪のモデルとして注目を浴び、年を重ねていっそう輝いている。

 メイの両親もまた自分たちのやり方を貫く魅力的な人たちだった。好奇心と冒険心に満ちあふれ、プロペラ一つの自家用飛行機でどこへでも飛んでいった。5人の幼い子どもを引き連れてカラハリ砂漠を3週間かけて旅したこともある。マスク家のモットーは「人生は大胆かつ慎重に」。

 ところが、可能性に満ちているはずのメイの人生は、なかなかうまくいかなかった。大学で栄養学を学び、モデルの仕事もしていたが、強引なプロポーズを受けて21歳で結婚、3年間で3人の子どもを産んだ。しかし、支配的な夫のDVに怯える日々は幸せではなかった。31歳の時、やっとの思いで離婚。がむしゃらに働いて、自分の人生を切り開いていった。食生活コンサルタントとして事業を立ち上げ、インスタグラムを通じてスーパーモデルの仕事もゲットした。遅咲きながらメイは成功した。

 この自伝を通して、メイは若くない女性たちを大いに勇気づけている。「年をとるのを恐れないこと。そして、年をとるのを恐れない友だちと付き合うこと」「年齢を問題にするようなろくでなし男はすぐに人生から追い出すこと」……。

 読み終えるとスカッとして、元気が湧いてくる。

(集英社 1600円+税)

【連載】人間が面白い

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