「捨て猫のプリンアラモード」麻宮ゆり子著
昭和37年、2年後にオリンピックを控えた東京で、17歳の畠山郷子は、集団就職した工場から逃げ出した。あまりにひどい職場だったからだ。人事担当者と工場長の追跡をかわし、黒いワンピースの女にリヤカーに隠してもらって、洋食屋に逃げ込む。
翌日、料理長が作ってくれたカレーに恐る恐る口をつけて「美味しいです!」と声をあげた。それまで、硬くて青くさいニンジンやざりざりした歯触りのタマネギが入った寮の食堂のカレーしか食べたことがなかったのだ。郷子は自分を助けてくれた淑子の店で働きたいと頼み込む。
肉汁たっぷりのハンバーグや、バターの効いた海老グラタンなど、浅草の「洋食バー高野」で少女が出合った、おいしい食べものをめぐる物語。
(角川春樹事務所 1500円+税)