「苦海・浄土・日本」田中優子著

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 水俣病患者とその家族に寄り添い、社会に問うた「苦海浄土―わが水俣病」の著者、石牟礼道子。

 大学1年の時に出合った同書に衝撃を受け、ノーベル文学賞にも値すると高く評価する著者が、石牟礼文学の本質とその思想に迫る評伝的文学論である。

 東日本大震災の翌年に行われた対談を再録、さらに作家の他の作品も読み解きながら、石牟礼文学は水俣病という過酷な状況だけではなく、「近代の引き起こした問題群および、1人の日本女性が抱えたさまざまな苦悩と、その原因である日本社会の問題」をも抱え込んでいたことを明らかにしていく。

 そして、社会や政治が経済発展ばかりを目指すことで起こる人々の命の困難を、水俣病という視点から凝視していた作家なら、今のコロナ禍をどう捉えたかと考える。

(集英社 880円+税)

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