「夢幻の街」石井光太著

公開日: 更新日:

 淘汰と再生を繰り返しながら独自の文化を育んでいった歌舞伎町のホストクラブ。本書は、歓楽街の浄化作戦やバブル崩壊、東日本大震災など、何度も訪れる危機を切り抜けながら生き抜いた彼らの半世紀を描いた書だ。

 社会のレールから外れた人々が生きられる場として目立たぬように存在していた時代から、空前のホストブームを迎えた時代を経て、さまざまなホストクラブが台頭しては消えていった。そこで生きる男と女の赤裸々な50年余りの歴史が、丹念な取材による証言とともに描かれている。

 本書の軸となるのは、ホストクラブ文化を確立したといわれる愛田武の存在だ。そのカリスマ性と経営手腕に刺激を受け、歌舞伎町にはさまざまな有名ホストクラブが誕生した。組織を整え、優秀な人材を安定的に確保することで、厳しい時代に生き残れるかどうかが分かれた様子も描かれ、ビジネス目線で読んでも面白い。

 今回のコロナ禍でも、新しい形の営業活動を始めるホストが現れたり、加えて失業者が増えたことで、ホストの求人への応募者が増えているらしい。激動の時代を乗り切る術を彼らから学べるかもしれない。

(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る