「夢幻の街」石井光太著

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 淘汰と再生を繰り返しながら独自の文化を育んでいった歌舞伎町のホストクラブ。本書は、歓楽街の浄化作戦やバブル崩壊、東日本大震災など、何度も訪れる危機を切り抜けながら生き抜いた彼らの半世紀を描いた書だ。

 社会のレールから外れた人々が生きられる場として目立たぬように存在していた時代から、空前のホストブームを迎えた時代を経て、さまざまなホストクラブが台頭しては消えていった。そこで生きる男と女の赤裸々な50年余りの歴史が、丹念な取材による証言とともに描かれている。

 本書の軸となるのは、ホストクラブ文化を確立したといわれる愛田武の存在だ。そのカリスマ性と経営手腕に刺激を受け、歌舞伎町にはさまざまな有名ホストクラブが誕生した。組織を整え、優秀な人材を安定的に確保することで、厳しい時代に生き残れるかどうかが分かれた様子も描かれ、ビジネス目線で読んでも面白い。

 今回のコロナ禍でも、新しい形の営業活動を始めるホストが現れたり、加えて失業者が増えたことで、ホストの求人への応募者が増えているらしい。激動の時代を乗り切る術を彼らから学べるかもしれない。

(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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