「『3密』から『3疎』への社会戦略」金光淳氏

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「3密回避」が叫ばれてもうすぐ1年。会社命令で始めてはいるが、在宅勤務はやっぱり何かと不便だし、リモート飲み会もイマイチだとのボヤキの声も聞こえてくる。しかし、著者は今こそ働き方やライフスタイルを変えられる絶好のチャンス到来だという。

「対面による密なやりとりでしかイノベーションは生まれない、と言いたがる人が結構います。でも、よく考えてみてください。そんな『プロジェクトX』みたいな世界って現実にどれだけありますか? 実際は、ただなんとなく会議に集まり、顔を合わせているだけというのがほとんどではないでしょうか。その会議は本当に必要ですか、と問いたいですね。コロナでやむを得ず広まったリモートですが、今が変わるチャンスなんです。私自身、日本的しがらみの多い会社組織や密な人間関係がもともと嫌いでして、大学の講義や会議がリモートになって日々快適です」

 本書は、ネットワーク科学や経営社会学などを専門とする著者が、2014年に行った「テレワーカー=電子在宅労働者」に関する大規模実態調査結果の分析などを通して、“ポストコロナ時代”の新しい働き方を提唱する意欲作である。

 著書のタイトルにもある「3疎」のすすめとは、①フリーランスという働き方の可能性をさぐる、会社や組織など「中枢管理」からの「疎」②「よそ者」が地方で生きていく意義を説く、「中央=東京」からの「疎」。そして、③テレワークを基礎にしたゆるい連帯で生きるモデルを想起させる、「人」そのものからの「疎」のことだ。

 つまり、コロナ以前の社会のありようであった「密閉、密集、密接」の3密から距離をとることである。

「日本では、労働者を採用したあとから、会社の方から本人に仕事を割り当てるメンバーシップ制がほとんどです。しかしそれでは、従業員が会社にしばられて、閉鎖的な組織になりやすいんですね。窮屈な組織では斬新なイノベーションは生まれにくいことは、さまざまな研究から明らかです。今必要なのは、組織からの『疎』です。テレワークを活用することで自分が選んだ空間と時間に働けるようになると、やがて多様な学習機会も増えるでしょうし、それが新たなイノベーションをつくりだすネットワークの創生にもつながるでしょう。そうしたテレワーク活用の権利を確立するためには、企業と対等な立場での自律的な組織労働者を目指す必要もありますね」

 著者がコロナ禍以前のテレワークの実態とフリーランスの調査分析をしてわかったことは、「テレワークに移行するのは予想以上に年齢層が高く、ベテランが多かった」ことだ。また、テレワークに移行したきっかけは、育児や介護もさることながら、精神的な病を含めた病気とケガがその大きなきっかけになっていた。

「病気やケガは誰にでも起こりうるし、年を重ねるとそのリスクは上がります。それらに備えるためにも、『密接』をさけつつ、お互いに踏み込まない人間関係と社会的距離が保てる『3疎』のソーシャルネットワークへのシフトが望まれます。コロナを機に、しがらみや密な人間関係を見直して、趣味でも仕事でも、本当にやりたかったことをはじめたらどうでしょうか。そのために本当に必要な人とつながるネットワーク構築が可能な時代になってきているんです。私は個人的に現代アートが好きなので、もし何もやりたいことがなかったら、とりあえずバンクシーを見てみてよ、とおすすめします(笑い)」

(明石書店 2200円+税)

▽かなみつ・じゅん 岡山県生まれ、京都産業大学現代社会学部教授。シカゴ大学大学院修士課程修了(M.A.)、ピッツバーグ大学大学院博士課程修了。専門はネットワーク科学、社会ネットワーク論、組織論、経営社会学、経済社会学、数理社会学。著書に「ソーシャル・キャピタルと経営 企業と社会をつなぐネットワークの探究」ほか。

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