北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「アクティベイター」冲方丁著

公開日: 更新日:

 中国のステルス爆撃機が「我、亡命を希望す」と交信したあと、羽田空港に突如、舞い降りる。しかも積んでいるのは核兵器、とその爆撃機の女性パイロットが言うから騒然。本書は、この緊迫した場面から始まる物語である。

 亡命の希望は本当なのか。何かの策略なのか。背景にはどんな陰謀があるのか。警察庁の鶴来は、女性パイロットを事情聴取しようと羽田から護送するが、その途中に何者かのグループに拉致され、ここから先は、錯綜というか、混迷の一途。核起爆の鍵を握るパイロットの身柄をめぐり、中国の工作員、ロシアの暗殺者、そしてアメリカの情報将校、さらには韓国の追跡者までもが追ってきて、複雑に絡み合うのである。

 しかも、警察の情報が流れているようで、内部の人間も信用できない。経産省、外務省などの日本の各省庁の争いも、思惑のぶつかり合いという範疇を超えて鶴来の前に立ちふさがる。いったい誰が味方で、誰が敵なのか、皆目わからないという状況に鶴来は立たされるのだ。

 これだけでも緊迫感あふれるサスペンスを十分に堪能できるが、実は本書を際立たせているのは、アクションシーンの迫力だ。これが素晴らしい。ここを叩くとどうなるか、と具体的に語りながら進めていくのでわかりやすく、ひとつずつの動作がスローモーションを見るかのように映像的なのだ。その息つく暇ないアクションの完成度に拍手。

 (集英社 1900円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    小室圭さんは一度は「婚約辞退」を考えた 内定会見後のお食事会から“異変”が…

  2. 2

    日本人の「知性低下」を露呈した東京五輪…政治家も官僚も私利私欲に走る

  3. 3

    眞子さまの結婚問題に揺れる秋篠宮家 当初は小室圭さんを絶賛された紀子さまに起きた変化

  4. 4

    小山田圭吾が一生涯背負う“十字架”と本当の謝罪 障害者の父親は「謝っても許されない」と強い憤り

  5. 5

    東京五輪入場行進にドラクエのテーマが…作曲家は”安倍応援団” 過去にはLGBT巡り物議醸す発言

  6. 6

    山崎育三郎“離婚”に高い壁 安倍なつみ復帰でざわつくメディア、本当の異変は?

  7. 7

    組織委の露骨な人種差別発覚! アフリカ人パフォーマーの開会式出演を排除していた

  8. 8

    コカ・コーラ社以外は持ち込むな!五輪サッカー観戦で鹿嶋市の小中学生に要望したのは誰だ?

  9. 9

    菅首相がファイザーCEOを国賓級おもてなし ワクチン枯渇“土下座交渉”も思惑また外れ…

  10. 10

    MISIA「君が代」斉唱は絶賛だが…東京五輪開会式で“大損”させられた芸能人

もっと見る

人気キーワード