「祈りのカルテ」知念実希人著

公開日: 更新日:

 現在放映中のTVドラマ「ナイト・ドクター」は、夜間専門のナイト・ドクターとして働く研修医たちの物語だが、そこで問題になるのは、彼らが研修期間終了後、どの診療科に進むべきかだ。本書の主人公も初期臨床研修で、さまざまな科を回りながら自分の進路を見定めていく。

【あらすじ】諏訪野良太は半年前から母校の純正会医科大学の付属病院で研修医として働いていた。現在諏訪野が研修しているのは精神科だが、どの科で研修していようと週に1回程度、救急部での当直を義務付けられている。

 ある晩、救急部に多量服薬で意識混濁の26歳の女性が搬送されてきた。しかし周囲の医師も看護師もなぜかのんびり構えている。聞くと、山野瑠香というその女性は狂言自殺の常習者で、あわよくば心配した元旦那が会いに来てくれるのではないかと期待して、もう20回以上同じことを繰り返しているのだという。諏訪野は彼女が毎月5日には決まって退院していることを知り、そうまでして病院に来るのにはもっと別な理由があるのではないかと疑う。人の心を開くのに長けている諏訪野は、見事その秘密を探り出すことに成功する。

 次の外科では胃がんの内視鏡手術を拒否する老人、皮膚科では治りかかった火傷痕に火傷する女性、小児科では薬を飲まずにぜんそくの発作を繰り返す少女、そして循環器内科では心臓移植を待つ女性と出会い、いずれも諏訪野の特技によって患者たちの閉ざされた心が開かれていく。どの科でも高い評価を得た諏訪野だが、なかなか決め手が見つからない。果たして彼はどの科を選ぶのか……。

【読みどころ】作者の現役医師としての経験に裏打ちされた研修医の多忙な日常がリアルに描かれる。 <石>

(KADOKAWA 704円)

【連載】文庫で読む 医療小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    萩本欽一(11)ひとりぼっち寂しく貧乏飯を食べながら「先生も同級生もバカだな」と思うことにした

  2. 2

    「男なら…」ヤクルト1位・村上宗隆を育てた父親の教育観

  3. 3

    社民・福島瑞穂代表と高市首相が35年前に共感しあっていた仰天「濃厚セックス対談」の中身

  4. 4

    大食いタレント高橋ちなりさん死去…元フードファイターが明かした壮絶な摂食障害告白ブログが話題

  5. 5

    ゾンビたばこ羽月隆太郎「共犯者暴露」の大きすぎる波紋…広島・新井監督の進退問題にまで飛び火か

  1. 6

    小手先、その場しのぎではもう駄目だ 長期金利急上昇は市場から高市への「退場勧告」

  2. 7

    追い込まれた高市首相ついに補正予算編成表明も…後手後手のくせして無能無策の極み

  3. 8

    佐々木朗希“初物尽くし”2勝目のウラに心境の変化…ドジャース指揮官が「以前との違い」を明かす

  4. 9

    ソフトBモイネロの体たらくに小久保監督イラッ…なぜ“同条件”の巨人マルティネスと差がついた?

  5. 10

    株主82万人に拡大も…前澤友作氏「カブ&ピース」のビジネスモデルは法規制に大きく左右される