「移植医たち」谷村志穂著

公開日: 更新日:

 1968年、日本で初の「和田心臓移植」は大きなスキャンダルを引き起こし、日本の移植医療は大きく立ち遅れることになった。この重たい扉を開いたのは、肝臓移植のパイオニア、米国ピッツバーグ大学のトーマス・スターツル博士のもとで修業に励んだ日本人医師たちだった。彼らは北海道大学に集結し移植医療の専門部署を立ち上げ、日本の移植医療を大きく前進させた。

 本書は彼らをモデルに移植医療の実態を詳細に描いている。

【あらすじ】1984年秋、京都慶明大学付属病院で、肝臓移植の世界的権威、ドクター・セイゲルの講演が行われた。その講演にジッと耳を傾ける3人の医師がいた。久南大学からの聴講生、佐竹山行蔵は肝臓専門の外科医で、移植しか助かる道のない患者を前に限界を感じていた。

 研修医の加藤凌子の父・泚嗣は日本で初の心臓移植手術を行い、その後マスコミから酷いバッシングを受けて日本を追われた。日本に戻って医師となった凌子は父の医療行為が果たして正当だったのかどうか、それを知るためにも自ら移植医療に携わりたかった。同じ研修医の古賀淳一は退屈な日本の師と違ってセイゲルのバイタリティーにあふれた人柄に魅了された。

 3人はやがて米国ピッツバーグ大学へ渡りセイゲルの元で学ぶことに。それぞれが研さんに努めて10年、佐竹山は北洋大学から新たに立ち上げた移植専門部のチーフとして招聘され、古賀、加藤も誘う。しかし、その前には移植医療に対する偏見という大きな壁が立ちはだかっていた--。

【読みどころ】脳死の人の臓器を移植することの倫理的葛藤、移植の成否を左右する免疫抑制剤の開発、移植コーディネーターの役割など、移植医療に関わるドラマをリアルに描く感動作。 <石>

(新潮社 935円)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    秋篠宮さま会見に英メディア「反発招いたのは眞子さんが初めて」と日本の価値観の古さ指摘

    秋篠宮さま会見に英メディア「反発招いたのは眞子さんが初めて」と日本の価値観の古さ指摘

  2. 2
    日本スポーツ界はやっぱり“政府の犬” JOC山下会長「北京五輪ボイコット」めぐる発言で再露呈

    日本スポーツ界はやっぱり“政府の犬” JOC山下会長「北京五輪ボイコット」めぐる発言で再露呈

  3. 3
    TBS「報道特集」放送後に勃発! ネオニコ系農薬めぐり業界団体と研究者が“場外乱闘”

    TBS「報道特集」放送後に勃発! ネオニコ系農薬めぐり業界団体と研究者が“場外乱闘”

  4. 4
    大谷翔平の私生活は謎だらけ…オフは婚活の貴重な時間、玉の輿狙いの女子アナたちは?

    大谷翔平の私生活は謎だらけ…オフは婚活の貴重な時間、玉の輿狙いの女子アナたちは?

  5. 5
    「おぼん・こぼん」の経済効果は絶大!水ダウが生んだ“犬猿の仲”芸人は2022年もガッポリ?

    「おぼん・こぼん」の経済効果は絶大!水ダウが生んだ“犬猿の仲”芸人は2022年もガッポリ?

もっと見る

  1. 6
    橋本環奈&坂本勇人が熱愛か 一途な“巨人愛”と意外な接点

    橋本環奈&坂本勇人が熱愛か 一途な“巨人愛”と意外な接点

  2. 7
    MLB労使交渉決裂は巨人に朗報? ロックアウト不可避で優良助っ人ゴロゴロ、日本球界は買い手市場に

    MLB労使交渉決裂は巨人に朗報? ロックアウト不可避で優良助っ人ゴロゴロ、日本球界は買い手市場に

  3. 8
    ふるさと納税“返礼品パリピ”に再考促す自治体 東京23区などの税金流出は深刻

    ふるさと納税“返礼品パリピ”に再考促す自治体 東京23区などの税金流出は深刻

  4. 9
    NMB48渋谷凪咲が“新バラエティー女王”に大躍進!毒舌でも天然ボケでもないユニークな魅力とは

    NMB48渋谷凪咲が“新バラエティー女王”に大躍進!毒舌でも天然ボケでもないユニークな魅力とは

  5. 10
    小室圭さんは一度は「婚約辞退」を考えた 内定会見後のお食事会から“異変”が…

    小室圭さんは一度は「婚約辞退」を考えた 内定会見後のお食事会から“異変”が…

人気キーワード