北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「世界の中心で馬に賭ける」須田鷹雄著

公開日: 更新日:

「海外競馬放浪記」との副題通り、訪れた海外競馬場160のうち、著者の記憶に残る63場を紹介する書である。

 世界には変わった競馬場があるものだと感心する。たとえば、スイスのサンモリッツ競馬場では湖に張った厚い氷の上に雪を敷きつめその上で競馬をする「氷上競馬」が毎年2月の日曜日に3週連続で行われるという。それ以外の日に競馬は行われないのだ。しかも普通の平地競走とハーネス(二輪車を馬が引く)と、スキージョーリング(スキーを履いた騎手を馬が引く。これは世界でもサンモリッツしか見られない)という3種類の競馬が行われるというから、一度は見てみたいものである。もっとすごいのは、アイルランドのレイタウン競馬場の砂浜競馬。ようするに砂浜にコースを作っちゃうのだが、こちらは年に1日しか開催されない。その日を逃すと1年待たないとレースは見られないから貴重な経験といっていい。

 そのほかにも、トルコ競馬は控除率が50%なので、当てても当てても儲からないとか、タイのロイヤルバンコクスポーツクラブ競馬場では、発走時間が過ぎても誰も馬券を買わないのでオッズが表示されない(発走時間が30分くらい遅れることが多いという。それを知っているのでタイの観客もぎりぎりまで馬券を買わない)とか、思わずホントかよ、と言いたくなる。競馬は世界中にあるんだな、ということを実感する本だ。 (中央公論新社 1980円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”