著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「バスケットボールの福音」岸田智明著

公開日: 更新日:

 バスケットボール小説である。主役は小学5年生の女子。陽菜と沙耶の双子姉妹が、バスケットのチームを作ろうと言いだすのが発端だ。特にバスケットが好きだったわけではない。日曜の朝からごろごろテレビを見ているだけの姉妹に、何かスポーツでもしろと父親が怒ったらしい。スイミング教室やテニスクラブは隣町までの送迎が必要だから、少し無理。最終的にバスケットが選ばれたのは、バスケおたくの春香を引きずり込めば、スポーツ万能の輪が漏れなく付いてくるからだ。

 春香と輪は家族ぐるみの付き合いで、とにかく仲がいい。付き合いのいい沙保里を合わせれば5人が揃う。これがバレーボールなら6人が必要になるから、断然バスケ。

 というわけで、佐井川フレンズが結成されるが、問題はバスケおたくの春香が観戦専門で、自身はスポーツ音痴であることだ。無謀きわまりないが、もっと無謀なのは、指導されることもなく、さして練習することもなく、ということはルールも知らずに大会に出てしまうこと。このあたりはとてもユーモラスに描かれる。5つ目のファウルをもらうとその選手は退場になるとは知らずにいたら、2人が退場になり、なんと3人で戦うはめになるのだ。ここから1年、今度はコーチの指導を受けてリベンジするのである。

 随所にまだ甘さが残っていて、さらに余分な要素もあるので大傑作とは言いがたいが、楽しいスポーツ小説だ。

(パレード 1430円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か